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メディア研究室訪問

現地に「会いに行く」学生の個性を伸ばす教育

早稲田大学 政治経済学部 高橋恭子 ゼミ

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は映像ジャーナリズムを学ぶ高橋恭子ゼミにお邪魔しました。

ゼミ合宿の様子。

DATA
設立 2011年
学生数 3年生14人、4年生15人
OB/OGの主な就職先 NHK、テレビ朝日、TBSテレビ、博報堂、電通、日本経済新聞社、東宝、KADOKAWA、三菱商事、サントリー、マガジンハウス、東海旅客鉄道、東日本旅客鉄道、キヤノンなど

米『ビジネス・ウィーク』誌、フリージャーナリストとしての活動を経て、2011年から早稲田大学で教鞭をとる高橋恭子先生。主に映像ジャーナリズムやメディア・リテラシーにおいて、次世代の育成に当たっている。

被災地に赴き、現地のメディアを知る

高橋ゼミは2011年に設立。当時から東日本大震災とメディアをテーマに取材活動、調査を行っている。実際に学生たちが主導して被災地に赴き、現地の新聞社、テレビ局、ラジオ局などで生の声に触れる活動を進めてきた。

「首都圏と被災地での報道のされ方や、現実とのギャップなどを分析することを続けてきました。しかし、取材先で話をしてくれるのは大人ばかり。"子どもたちの話を聞けていない"という学生たちからの意見を受け、2014年からは小学生との交流プログラムも始めました」。

そのプロジェクトは、福島県南相馬市の太田小学校の5、6年生たちと一緒に、町の魅力を伝える映像作品を制作するというもの。ゼミ生たちは夏に行われる3泊4日の合宿の間に小学校を訪れ、小学生たちが事前に授業で考えた企画を一緒に映像作品へと仕上げていく。絵コンテ作成から、台本、演出、撮影、編集まで、学生たちが主体となり小学生をサポートしていく。

また2017年からの合宿では、現地の人々へのインタビューや被災地の視察、桜井勝延南相馬市長(当時)や現地の県立小高産業技術高校の生徒とのディスカッションなども実施した。「この合宿を通して、現地の人たちの復興への熱意や現状を知ることができました。私たちがメディアで得られる情報は一部でしかない、ということにも気づかされた4日間でした」と学生たちは語った。

福島県の南相馬市立太田小学校の児童と映像作品づくり。給食を一緒に食べるなど、小学生との交流を通し、被災地での実際の生活を経験する機会にもなった。

地元の高校生とディスカッション。被災体験の生の声を聞いた。

選挙報道についてのディスカッションも

今回、取材に訪れたゼミ当日は、7月21日に行われた参議院選挙を受け、ワークショップを実施。マスメディアでの報道や番組を実際に見て、「投票率が低かった背景は何か」「選挙特集番組で若者の投票率を上げる活動が取り上げられていることに対し思うこと」といったテーマでディスカッションが繰り広げられた。高橋ゼミの学生は、メディアに対し強い関心を持つ学生が多く、自分の意見も積極的に発信。常に活発な議論が見られるという。

マスコミ業界にも人材を多数輩出

高橋先生がゼミや教育を行う上で心がけているのは、「個性を大事にする」ということ。「学生の興味や関心はなるべく自由に伸ばしてあげたい」と語る。

一方で学生たちは、「基本的に学生の判断に任せて自由にしてくれるが、自分の意見もしっかり伝えてくれる。良い意味で私たちを学生としてではなく、ひとりの人として対等でいてくれます」と印象を語るなど、全幅の信頼を寄せている様子がうかがえた。

広告・マスコミ業界で活躍するOB・OGも多く輩出しており、プロのカメラマンになり、第一線で活躍する人などもいる。一人ひとりの個性を大切にしつつ、実践と座学を融合させた高橋ゼミでの経験は実社会の現場にも結びついているのだ。

取材当日の高橋ゼミ。

次世代教育に意欲 デジタル世代の若者から学ぶこと

元々、コロンビア大学大学院で芸術学を専攻し、その後民間で活躍していた高橋先生。教育の場でも、その"実践"主義は変わらない。

高橋先生は、「次世代育成はやりがいを感じるのはもちろん、自分自身のためにもなっている」と話す。

ICT化が進み、情報の受け取り方や感じ方は刻々と変化してきている。「学生を通して、今のメディアを若い人たちがどう捉えるのか、その背景には何があるかを知ることができます。常にアップデートした考えを持てることはプラスとなっています」。

現在は毎日新聞社、毎日映画社、スポーツニッポン新聞社が主催する「日本こども映画コンクール」の審査員を務めるなど、活躍の場を広げている。

高橋恭子(たかはし・きょうこ)教授
早稲田大学政治経済学術院教授。ビジネス・ウィーク東京支局、フリージャーナリスト、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、早稲田大学川口芸術学校校長を経て、現在に至る。専門領域は、映像ジャーナリズム、次世代ジャーナリズム、メディア・リテラシー。

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