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メディア研究室訪問

デジタルネイティブな学生たち 情報を知に変えるメディア教育

立教大学 木村忠正研究室

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回はネットコミュニケーション研究を行う木村忠正ゼミにお邪魔しました。

取材当日の木村ゼミ。

DATA
設立 2015年
学生数 3年生18人、4年生22人
OB/OGの主な就職先 リクルート、楽天、大日本印刷、凸版印刷、NTTドコモ、ジェイアール東日本企画、朝日広告社、オリエンタルランド、江崎グリコなど

メディア・コミュニケーション論やインターネット社会研究について2015年から立教大学で教鞭をとる木村忠正先生。元々、文化人類学を専攻していた木村先生は大学院修了後、インターネットの研究をスタート。IoT社会実現への動きが世界的に高まる中で、国際比較という視点で社会とネットの関わりを説いている。

文化人類学は民族・社会間の文化や社会構造の比較研究を主とする分野であり、何万年というスケールで人類の変化を捉えてきた。そのひとつの領域としてまだまだ未開の部分が多く、進展していくであろう「インターネット社会」、特にデジタルネイティブ世代(学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代)について研究を進めている。

情報社会で生きていくための知識

ゼミでの目標は「Be a Knowledge Professional!(知の専門家であれ!)」。学生たちはまさにデジタルネイティブ世代。「メディアが常に周りにあり、情報があふれている社会を生きていくことが求められる学生にとって、情報を選択して、いかに自分の正しい知識に加えられるかは重要な教育です」と木村先生は語る。

ゼミ当日は学生たちがまとめた文献レポートについて批評会が行われていた。レポートに関して本人が前に出て説明し、他の学生たちはパソコン上の添削機能やコメント機能で気づきを共有していく。インターネット研究を行うゼミらしく、活動のすべてがペーパーレス。一人1台パソコンを用意し、ゼミのスケジュール管理や出欠確認などについてもネット上で行われる。

学生は3年次から自身の興味のある分野を決め、文献・資料集め、データ分析、社会調査(アンケート)などを行っている。「デジタルネイティブ世代であるゼミ生たちには、分からないことを分からないままで終わらせるのではなく、とことん探求して、インターネットやそこに集積されたデータを主体的に使いこなせる人になってほしいと思います」。

ゼミでは一人1台パソコンを使用。貸し出しも行っている。

日常にあるネット環境が研究対象

ゼミ長である4年生の松久陽介さんが選んだ研究テーマは「炎上」。近年SNSなどで特に頻繁にみられる炎上問題についてデータを用いて検証している。3年次には木村先生が受け持つ授業の生徒を対象にアンケート調査を実施。200人近くの回答をデータとして、解析・検討を進めてきた。最終目標である卒業論文作成のため、活動を続けている。

ゼミ生の卒論はほかにも「大学野球とSNS」「日本の若者(大学生)の共有・共感SNSコミュニケーション」「LINEの利用方法から考察するコミュ障の改善」「インスタ映えとインスタ疲れ」など、現代のネット文化や学生ならではの疑問、悩み、興味が反映されたテーマになっている。

木村先生自身、学生から自身の研究のヒントをもらうことも多々あるという。「研究対象でもあるゼミ生たちとの交流をもつことで、最近の若者のメディアに対する考え方や潮流に触れることができる。自分にとっても大学でメディア教育を受け持つことは有意義な経験となっている」と語る。

Check
Google フォームを利用したアンケート調査。学生188人を対象に2018年10月29日~11月25日にかけて実施した。

"コミュ力"が欠かせない現代社会

木村ゼミでは、ゼミ内の交流が盛んだ。1年に4回ほど、ゼミ生皆でランチを楽しむほか、ゼミ合宿も3、4年生合同で行う。そこには木村先生の「コミュニケーション能力を伸ばしてほしい」という思いも表れている。「メディア教育は結局、コミュニケーション。研究やネット上のやり取りだけでなくこのゼミを通して人や自分と向き合ってコミュニケーション力を高めてもらいたいです」と語った。

ゼミ合宿も1年に1回開催。授業以外でも活発に交流している。

国際比較から見えてくる 日本のネット文化

文化人類学を専攻していた木村先生がメディア(インターネット)研究を始めたのは、1994年。国際大学GLOCOM(*)に所属し、公文俊平氏、村井純氏など日本におけるネット開拓者に魅せられた。当時、インターネット研究はまだまだ未開の領域。文化人類学を基盤に今後進展していくインターネット社会にアプローチするのも面白いのではないかと考え、ネットワーク社会の研究の道に進んだ。

1991年に設立された国際大学付属の研究所。「情報社会学」と総称される情報社会の諸側面の学際的・総合的研究を行う。

人類学の比較社会文化的視座は、ジェフリー・コール教授が主催する「ワールドインターネットプロジェクト」(世界39カ国の研究機関が共同でインターネットの利用実態と社会的影響について実証的に研究)の日本チームとしての活動にも活きている。

木村忠正(きむら・ただまさ)教授
東京大学大学院総合文化研究科文化人類学専攻修士課程修了、修士号取得。2010年ニューヨーク州立大学バッファロー校大学院人類学部博士号取得。東京大学大学院総合文化研究科教授などを経て、2015年から現職。CS朝日ニュースター『ニュースの深層』キャスターなどを歴任。

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