社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学ぶ連載です。

100周年の記念誌は箔押し加工や冊子の形状、質感にこだわった力作。制作過程ですべて経営陣のチェックが入る。銀色のカバーの模様は麹菌や酵母菌の形がモチーフ。
2016年、霧島酒造は創業100周年を迎えました。今回は社員や顧客、そして地域の方々に対して様々な周年記念の施策を展開してきた霧島ホールディングス企画室PR係主任の大久保昌博氏にお話しを伺いました。
新価値を生む若いパワーを結集
本連載で過去にも何度かご紹介していますが、周年は創業から今までの歴史を振り返り、未来に踏み出すための転機です。改めて「自社の価値」を問い、これまで、そしてこれからの「企業価値」をステークホルダーに対して宣言する機会とも言えます。
南九州のシラス台地が生み出す霧島裂罅水(れっかすい)とさつまいもが源となっている霧島酒造の焼酎は、2000年代に飛躍的に支持を集め、10年間で売上を2.5倍に拡大。継続的に前年を超える成長を記録するなど、老舗ながら大躍進を続けています。100周年という節目は「自社に関わる人全員で次の100年について考える機会にしたい」との思いからステークホルダーごとに周年施策を展開しています。
実は同社は100年の長寿企業としては珍しく、平均年齢32歳と非常に若い組織。売上の拡大に伴い社員が増え続けています。80周年を迎えた際に定めた行動指針ならぬ「考動指針」が掲げられており、自ら考え、未来を創ることを推奨しています。「品質をときめきに」という企業スローガンのとおり高い品質基準へのこだわりが求められている一方、2015年のホールディングス化に伴い、「会社間や部署間でお互いを知らない」という現象が徐々に表れてきたといいます。
そこで100周年では、社内向け記念パーティーを実施。互いの事業や人を知り、交流できる機会とすることで、会社をつくっていく「当事者」(同社の言葉でいう主役)としての意識を高める機会としました。これにより細部にまでこだわり抜く、「品質」に対する基準や姿勢をすり合わせる活動が進んだといいます。

この日は社員も総出で来訪者の皆さんをおもてなし。自然と、地元への感謝の気持ちが育まれる。

年に2回、春・夏に自社敷地内で開催するイベントには約3万人の地域住民が訪れる。
地元に最大限の敬意を払う理由
大久保氏は取材中に何度も「地域の方々には、霧島酒造が最も大事にしているのは地元であると感じていただければ」と、地元への感謝を …