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長寿企業の極意・周年イヤーの迎え方

西川産業の450周年プロジェクト 次なる500年へグループの未来の方向性定める

西川産業

社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学ぶ連載です。

数年前から編さんを進めていた西川産業450年史のダイジェスト版から(写真は表紙)。

5月に開催した取引先向け「感謝の会」は約300人を招いた。

室町時代に創業した西川産業は2016年、450周年を迎えました。今回は1年間を通じて周年事業を中心的に進めてきた、同社執行役員部長・営業統括本部総合企画室室長の竹内雅彦氏にお話を伺いました。

一時的な「お祭り」では意味がない

長寿企業には、企業として継承されている「こだわり」「慣習」があります。その「こだわり」こそが長寿の秘訣とも言えるでしょう。同時に創業からの長い歴史を見てみると、市場の環境変化に対して適切な「変化」を遂げています。西川グループの450周年も同様です。500周年に向けてさらに発展を遂げるために、意図的に、そして計画的に「変化」を仕掛けていったのです。

西川ブランドは西川産業をはじめ、西川リビング、京都西川などグループ各社が守り、育ててきた歴史があります。ただ東京、大阪、京都と拠点が複数あり、グループとしての方向性の共有が課題となっていました。そこで「450周年=グループ全体の今後の目指す方向性を共有する機会」と設定したのです。

ともすると周年記念のプロモーション活動は商品製造部門や販売部門が主導で進み、販促強化のための「お祭り」と捉えてしまいがちです。竹内氏によると、今回はそんな状況に経営層から「待った」がかかったそうです。「一時的な売上増ではなく、500年続く企業になるための周年事業を」というゴールを定め、約1年前からグループ各社を巻き込む形で始動しました。

議論のプロセスに意味があった

2009年に発売した、コンディショニング・ギア「AiR(エアー)」(写真は展示会の様子)。アスリートにも愛用者が多い。

2015年に立ち上げた寝具ブランド「&Free」は人々の快眠を支える。

2015年初頭からスタートした450周年行事のプロジェクトミーティングでは若手を含むグループ5社の有志が各社で集まり、月に1回程度のペースで議論を展開しました。日常では「個社」で目の前の成果創出に取り組んでいるメンバーが「450年の歴史」から「グループ」としてのDNAを紐解き、「グループ」としての今後の方向性を集約。

実現に向けた具体的な施策についても検討、実行したそうです。最終的に施策を実現したことよりも「グループのビジョンや経営理念を考え、共有しようとするプロセスに意義があった」と竹内氏は振り返ります。

相応の時間も労力もかかったと思いますが、日常ではない(1)時間観、(2)スケール観、そして若手参加の完全ボトムアップという(3)形式で取り組むことができたのは、50年に一度の特別な機会だからこそ。これら3点はまさに現状維持の打破に必須の要素であることから、西川グループの周年は変化に向けた絶好の機会として周年行事を活用できたと言えるでしょう。

2016年5月には取引先などを招いた「感謝の会」を都内で開催し、約300人が出席しました。社員も約80人が参加しています。ここで会社の方向性について宣言し、社員からの公募で決定した450周年のスローガン「眠りの革新が、明日を変える」のもと、マス広告への出稿や店頭での発信、顧客開拓などを進めてきました。

中でも社員の皆さんが450周年のロゴ入りバッジを身につけることで、歴史の重さと西川グループが持つDNAについて感じる機会となったといいます。筆者も個人的に(本取材とは関係なく)一消費者として店舗に訪れる機会がありましたが、応対されたスタッフの方が丁寧に西川の原点についてお話をしてくださったことが印象的でした。

一見、ありふれた手法かもしれませんが全国に販売網を持つだけに、その効力は絶大です。この節目をきっかけに自社を語り、誰もが歴史とともに今後、世の中に対して提供すべき価値が何かを考えることができたのではないでしょうか。

451年目、これからが勝負

2015年末の社内イベントでは、翌年の450年イヤーに向けて揃いのTシャツを着用。全社の機運を盛り上げた。

グループ全体の方向性や社会的な存在意義について共通認識を持てたからこそ、「451年目となる今年は勝負の年になる」と竹内氏は力強く語ります。グループのプロジェクトミーティング内で出た課題を絞り込み、今後タスクフォースとして取り組んでいくようです。

「500年続き、愛される企業」というゴールを見据えた西川グループの変化への挑戦は今まさに始まったばかり。「周年」という機会を有効に活用したことでグループ全体や自社のDNAに視野が広がったなら、あとは行動あるのみです。老舗でありながら挑戦し続け、人々の健康をつくる「睡眠」から健やかな人生を支えるブランドとして受け継がれていくのでしょう。

西川産業 創業450周年
営業統括本部を中心に、グループ各社から意見を募り周年事業の施策を決定
2015年
1月
グループ各社の有志から周年事業に関する企画提案を募る
12月 社内で450周年に向けた決起集会
2016年
1月
450周年の幕開けを新聞広告で告知
3月 「クイズに答えて450万円相当金のふとんを当てよう!」プレゼントキャンペーンなど実施
4月 成田国際空港第2ターミナルに「AiR」体感空間オープン
5月 取引先向けイベント「感謝の会」
10月 東京ミッドタウンで期間限定ショップを展開

西川産業 1566年創業

1566年、初代・西川仁右衛門が近江国(現在の滋賀県)で蚊帳・生活用品販売業として創業。1887年にふとんの販売を開始し、現在は西川リビング、京都西川など12のグループ会社を持つ。近年は寝具メーカーとしてコンディショニング・ギア「AiR」、パーソナル・フィッティングブランド「&Free」などを展開している。

総括

ダーウィンの進化論ではありませんが、環境に対して適切に変化した者のみが生き残ることができます。それはすなわち、今を疑い、残すべきことと変えることを決め、行動することです。周年という機会は、各社として目指す基準を定め、社員を巻き込むことができれば、必ず意図的に企業を大きく変化させるきっかけとして活用することができます。

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取材風景
本社ショールームにて、西川産業 執行役員部長・竹内雅彦氏と筆者(最近、偶然にも西川の枕を購入したばかり)。

リンクイベントプロデュース エンジニアリングユニット マネジャー
根本絢帆(ねもと・あやほ)

2005年リンクアンドモチベーション入社。リンクイベントプロデュース創業時から参画、数多くの周年事業、理念浸透プロジェクトに従事。イベントを通じた企業のインナー・アウターブランディング、人の心を動かす「場創り」を支援する。

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