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トップと語る 経営と広報

事業を育て、ブランドを築くことがコミュニケーション部門の役割

パナソニック 役員 ブランドコミュニケーション本部長 竹安聡 氏

2018年に創業100周年を迎えるパナソニックは、経営戦略の一環として、新たなブランドコミュニケーション活動を展開している。ブランド戦略や広報・宣伝などのコミュニケーションを統括する竹安聡氏に聞いた。

パナソニック 役員 ブランドコミュニケーション本部長 竹安聡(たけやす・さとし)氏
1956年生まれ。大阪府出身。同志社大学商学部卒業後、1979年松下電工(当時)入社。宣伝部、介護事業の立ち上げなどを経て、2009年から取締役として全社経営戦略担当。2012年、パナソニックによる吸収合併を経て同社役員。2013年からブランドコミュニケーション本部長(現職)。コーポレートコミュニケーション・宣伝・社会文化を担当する。

[聞き手]
社会情報大学院大学 学長 上野征洋(うえの・ゆきひろ)

日本広報学会副会長、静岡文化芸術大学名誉教授。2012年、事業構想大学院大学副学長を経て2017年から現職。内閣府、国土交通省、農林水産省などの委員を歴任。早稲田大学卒、東京大学新聞研究所(現・大学院情報学環・学際情報学府教育部)修了。

実体に即したブランド体系に

上野:最近、新聞でTechnics(テクニクス)の広告を見ましたが、広告のどこにもパナソニックとは書いていなかったことに驚きました。あのような事業ブランドの訴求もあるのですね。

竹安:当社は2008年にコーポレートブランドをグローバルでPanasonic(パナソニック)に統一しましたが、2014年からはパナソニックブランドとの関係性を明示しなくて良い個別の事業ブランドを認めています。オーディオの「テクニクス」は個別事業ブランドの代表格にあたり、パナソニックから切り離して広告キャンペーンなどの展開をしています。

上野:それは、全体としてはパナソニックブランドへの信頼に収れんされていくということですか。それとも個々に強いブランドが育てば、パナソニックに収れんされなくても良いという考えですか。

竹安:両面あります。当社の実体により即したブランド体系を構築しようとしており、テクニクスのケースもその一環です。

日本でパナソニックといえば、家電の会社と思う方が多いでしょう。調査によると、国内では8割の方が家電のイメージをお持ちです。ところが、連結売上高に占める家電の割合は2割強なのです。もちろん、家電はパナソニックのDNAであり強みであることに変わりはありません。でも実際のところは、住宅関連や流通小売、公共施設、航空・自動車関連など、BtoB事業の売上が約8割を占めます。実体とイメージが逆転しているわけです。

上野:なるほど。たしかに住宅や流通小売などは、あまり我々のイメージにはありません。

竹安:そのことは現在の課題です。そこで家電以外にも多様な可能性を持っていることを伝えたいと考え、「Panasonic Automotive(車載事業)」や「Panasonic Homes & Living(住宅および住空間)」といった具合に、今後の注力事業をパナソニックブランドとともに打ち出す"Panasonic事業ブランド"を立ち上げました。さらに、先ほどお話ししたテクニクスのような個別の価値を訴求する事業ブランドもつくりました。

上野:ブランド体系を整理したわけですね。「A Better Life, A Better World」というブランドスローガンを見かけます。これが全体の …

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