いつも購入する商品と同等か、それ以上の高価な商品やサービスを顧客に促す手法であるアップセルと、ユーザーに関連商品や補完的な商品の購入を促すクロスセル。どちらも販売促進戦略の中で、顧客の購入単価を向上させる鍵となる。これらを促す戦略を考えていくと、単なる売上の増加だけでなく、顧客のLTVを向上させる重要な手段であるとわかるのではないだろうか。本稿では、顧客のLTVを高めるために不可欠な要素となりうる「アップセル」「クロスセル」を促す戦略立案や、顧客の購入単価を引き上げる方法を考察する。
人口の減少が続く現代において、既存顧客とのつながりの強さを示すLTVなどの指標が重視されるようになっています。
特に、販促業界の全体としては、普段購入している商品よりも、高品質・高単価な商品へ手を伸ばしてもらうことを促す「アップセル」や、関連商品を提案して同時購入を促す「クロスセル」の実践手法を追求する動きが見られています。
もちろんLTVという「指標」を追い求めることは大切です。しかし、まず目を向けなければならないのは、指標や概念から施策を考えるのではなく、まずは消費者と対面している小売の販売促進活動を丁寧に捉えること。その役割や在り方の再考から始めることが、販促事業者やメーカーの販促に携わる担当者の視点でも必要です。そしてその結果として、LTVという指標を高めることにつながっていることが理想なのです。
小売における販売促進活動の位置づけと課題
図1は、店舗の売上に影響を与える小売の戦略や施策の概要を整理したものです。上に記載された施策ほど、重要度が高いことを意味します。

図を見てみると、店舗売上は①出店戦略、②商品戦略で決定されるといっても過言ではありません。特に②商品戦略こそが小売が消費者へ提供する本質価値になりえます...