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阪神タイガース、18年ぶりのリーグ優勝 消費意欲向上の裏側に迫る

2000人の行列に売上1.6倍阪神百貨店、優勝セール実施までの内幕

鈴木健三(阪急阪神百貨店)

2023年9月14日、阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を遂げた。街一帯が祝福ムードに包まれる中、阪神梅田本店では翌日の9月15日から優勝セールを開始。初日の開店前には2000人の顧客が並び、開店時間自体も繰り上げた様子が報道された。結果、9月の阪神百貨店は昨年比158%の売上を記録している。気になるのは、このセールを実現させるまでに、どのような過程を踏んだのかということだ。今回、優勝セール実施の立役者である同社の鈴木健三氏に、優勝セール実施までの内幕と、阪神タイガースファンの「購買スイッチ」の実情を聞いた。

阪神百貨店梅田本店外観。

阪神梅田本店全体の7割で優勝記念施策を実施

─阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝。セールも2005年以来です。今回は具体的にどのようなことを実施したのでしょうか。

阪神百貨店梅田本店には合計で約400のショップを展開しています。今回の優勝セールではその400店のうち、7割の店舗で優勝記念商品・福袋の販売に加え割引施策を行いました。施策の種類は、お取引先である各店舗によって様々ありますので、一言で「これをした」とは言い難いのですが、それくらい多くの特別施策を実施したということがわかってもらえるかと思います。

優勝セールの期間は、阪神タイガースのリーグ優勝が決まった9月14日の翌日、9月15日の営業から21日までの7日間です。セール開始当日は金曜日と平日でありながら、開店前から多くのお客さまにお並びいただけました。まさに壮観でしたね。

阪神タイガースの優勝は、私たち阪神百貨店にとっても大変喜ばしいことです。しかも私たちのお客さまであり、阪神タイガースファンの皆さまにとっては18年間待ち望んでいたのが今回の優勝。2003年や2005年のリーグ優勝時を振り返ると、盛り上がりはとてつもないものになることは予想していました。

そこで、今回の優勝セールで一貫して大切にしていたのが、「2003年、2005年の優勝セールのほうがよかった」とお客さまに思わせないようにすること。お客さまには、18年前をよく知っている方も多くいらっしゃいます。その方々に「前のほうがよかった」と思われることは、あってはならないと今回のセールに臨みました。

セール開始日の9月15日(金)の様子。開店前から2000人の行列に。

優勝セールを告知したバナー。

優勝セールのにぎわい。1日に20万人を超える来場者数になった。

セール開始日にはセレモニーも開催。阪神タイガースマスコットキャラクターのトラッキー、ラッキー、キー太が登場した。

─セール開始日には約2000人の列ができたと聞きました。

おっしゃる通りです。先ほども述べましたが、セール初日の9月15日は金曜日でした。平日の朝にもかかわらず、開店前から約2000人のお客さまにお並びいただいていました。行列は地下の入口から、館の外周までずらりと続いてかなりの長さになりましたね。一番早いお客さまは朝の5時30分頃からお並びいただいていたようです。

セールの開始からは遅れて、9月24日に阪神タイガースの優勝記念グッズの販売を開始したのですが、その初日にはセール開始日を超える約2800人が並ぶ結果になりました。おかげさまで大盛況です。

期間中は長時間お並びいただき、お待たせしてしまったことに対しては心が痛かったのですが、並ばれていた阪神タイガースファンであり我々のお客さまである皆さまから聞こえてきたのは「ありがとう」という感謝の声でした。運営にあたっていた私たちの心も温かくなりましたね。

実は毎年7月から準備していた? 優勝セール開催までの道のり

─今回は優勝という結果になりましたが、優勝の可能性は毎年ありますよね。セールはいつから準備なさるのでしょうか。

阪神タイガース優勝の可能性は毎年あります。今回の盛り上がりからも感じ取っていただけるように、優勝セールはお祭りのような一大イベントです。もちろん阪神百貨店としても毎年の準備は欠かしません。

今年の優勝セールの検討はタイガースが好調なこともあり、7月末頃から始めました。タイガースの状況にもよりますが、例年だと7月~8月の中旬くらいに優勝セールについての議論を開始して、大枠から決めていくようなイメージですね。

議論の内容としては、例えば「ノベルティをどうするのか」や、「当日の動線」、「在庫の管理」、「取引先にはいつから準備してもらうのか」など、セールを運営するにあたって決めなければならないことを着実に固めていくような流れです。

まずは「何をいつまでに準備しなければならないのか」というスケジュール感を大枠として決定し、進行していきました。

─毎年7月から検討していたとは驚きです。優勝セールの協力を依頼するにあたって、取引先からの反応はいかがでしたか。

「阪神タイガースの優勝」は、消費や購買意欲の向上という面でも大きなパワーがあるということは、各お取引さまが理解してくださっていました。むしろありがたいことに、今回のセールを好意的に捉えてくださっている方々のほうが多かった印象です。

お取引先さまには、18年前の優勝を知る方もおり、その方々は過去の盛り上がりも経験しているので、今回の優勝セールについても前向きに進めてくださいました。優勝を知らないスタッフの方々についても、阪神優勝時の経済効果についてはご存知の方も多く、ポジティブに取り組んでいただきました。優勝セールはお取引先さまのご協力があってこその運営です。ここでも…

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