コロナ禍以前より、デジタル化に注力してきたことで、コロナ禍に対応した3社は、社内でDXという言葉はあまり意識していないという。では、どのようにデジタルの取り組みを進めているのか話を聞いた。
DXはバズワードとしてはよい
──DXという言葉について、どのように捉えていますか。
小河(FOOD&LIFE COMPANIES):当社ではDXという言葉はあまり使いません。われわれとしては「お客さまがより便利においしいお寿司を食べていただく」「従業員がもっと働きやすい環境で働ける」という目的を持ち、そのひとつの手段としてデジタル化やシステム化、ロボット化があります。DXという言葉を使うかどうかは、会社それぞれの状況によって決めればよいと思います。
長谷川(コープさっぽろ):たしかにわれわれもDXという言葉自体はあまり使いませんが、バズワードになっているのは良いことだと思っています。バズワードは、消えていきますが、その時代のアクセルになるのでバズワードにすらならないよりはましです。みんなが「何かやらなければいけない」と思い、専門部署をつくるなど、わからないことであっても動くこと自体に意味があります。もちろん、DXを推進した10社中10社が成功するわけではないですが、10社中1、2社でも、大きな成果を出せば、社会全体が前に進んでいくと思います。
長澤(ローソン):ローソンでは、「デジタル」や「データ」という表現を使っています。当社は、2025年に創業50周年を迎えるため、そこに向けて、お客さま、社会、仲間からのレコメンドNo.1になる「チャレンジ2025」というテーマを掲げています。そこを下支えするもののひとつとして、デジタルやデータの活用があるというイメージです。
パートナーに求める柔軟な対応
──デジタルの取り組みについて、コロナ禍で変化はありましたか。
長谷川:コロナ禍では、小売側が変化したというよりも、顧客側の意識が大きく変わったことに意味があります。例えば、レジでいうと、今までは釣銭を手でお客さまに渡すのが真心だ、と言われてきましたが、いまは人の接触はよくない状況なので、むしろ避けるべき行為です。
クレジットカード決済であっても、これまではレジの人にクレジットカードを渡して、レジの人が読み取って、お客さまに戻すというのが常識で、お客さま側に読み取りなどさせるのは失礼な行為だと言われてきました。しかし、そこの意識が大きく変わったことで、今やクレジットカード決済をお客さま側にお願いする場合もありますし、セルフレジも一般化しました。
そもそも、セルフでできることはセルフでやった方が合理的ですし、人を介さない方が良いケースもたくさんあります。これも例えばですが、ATMに向かって怒る人はほとんどいないですよね。ATMでお札がくしゃくしゃで読み取れなかったとしても、仕方ないから他のお札に変えるか、となります。しかし、自動釣銭のレジでスタッフがお金を投入して、お札が入らず、お客さまに「別のお札ありますか」と戻したら、クレームになったりするのです。
小河:実はわれわれは...