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小売企業 座談会

青山商事、東急ストア、三越伊勢丹の3社が考える「DXに欠かせない要素」

青山商事×東急ストア×三越伊勢丹

デジタル庁が設置され、国全体で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)。リアル店舗を持つ、小売業も例外ではなく、各社様々な取り組みに動いている。ここでは、青山商事、東急ストア、三越伊勢丹でそれぞれDXに取り組む3人に、どのような取り組みをどのように進めているか、またDXにおける重要な点について、話を聞いた。



青山商事
マーケティング部
デジタルマーケティンググループ
グループ長
薮田直司氏

1995年、青山商事入社。洋服の青山店舗にて販売業。1998年、青山商事本社に異動し、IT推進部でITを活用した業務効率化を推進。2007年、Web戦略推進部に異動。Web戦略強化のため、コーポレートサイト、ブランドサイトを刷新。2011年、青山商事東京本部へ異動し、EC事業部でECの売上拡大及びオムニチャネル推進を図る。2018年にはイーグルリテイリングに出向し、アメリカンイーグルでIT・EC業務担当し、店舗ネットワーク、ECプラットフォームを刷新。2020年に青山商事東京本部デジタルマーケティング部へ異動し、デジタル施策全般担当している。

東急ストア
営業本部 デジタルマーケティング部
DX推進課長
山口修平氏

1999年、東急ストア入社。2002年より情報システム部(現デジタルマーケティング部)で納発注・POSシステム関連の業務に従事。現在、ウィズコロナでの店舗業務支援システム全般の改革にITを通して取り組む。様々な角度から検討・構築を進めている。

三越伊勢丹
オンラインクリエイショングループ
デジタル事業運営部
仲田朝彦氏

2008年に伊勢丹(当時)に入社後、紳士服担当として店頭・バイヤー業務を経験。2019年、三越伊勢丹 MD統括部シームレス推進部。2020年、三越伊勢丹ホールディングス チーフオフィサー室 関連事業推進部を経て、2021年より現職。現在、VRを活用したスマートフォンアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」の事業企画・開発責任者としてVRプラットフォームの拡大に挑戦中。

各社が取り組むDX

──それぞれ担当している業務について、教えてください。

薮田(青山商事):私が所属するデジタルマーケティンググループは、デジタル上の媒体をうまく活用して、お客さまとの接点をつくる部隊です。SNSやアプリ、メルマガなどを活用し、新規顧客獲得を目的に、Web広告なども運用しています。今年度はMA(マーケティングオートメーション)ツールを見直し、メルマガでパーソナライズしたコミュニケーションなどを実現しています。

当社は昔からOMO戦略を重視しており、様々な取り組みを行っています。例えば、アプリ。今年度、一番大事にしているのが、メルマガと同様にMAツールの活用によって、お客さまの行動にあわせたり、天候を起点にしたポップアップ配信などを実施したりして、購買あるいは店舗来店につなげる、ということです。また、もうひとついうと、今までは本部主導のメッセージ発信だったところを、店舗のスマホから直接、お客さまにプッシュ配信する仕組みをスタートしています。

そのほかにも、「デジラボ店」の拡大もわれわれのミッションのひとつです。「デジラボ店」というのは、店舗の在庫を縮小し、売り場スペースにサイネージを設置した店舗です。来店したお客さまはサイネージからネットオーダーができ、商品を選んで手ぶらで帰るというような新しい買い物体験を提供しています。「デジラボ店」は買い物の利便性が好評で、今年度は新たに100店舗増やし、導入を加速させています。

山口(東急ストア):私は現在、ウィズコロナという状況下で店舗の支援システム全般を改革して、検討・構築を進めています。例えば、当社ではこれまで、需要予測の発注などに取り組んでいましたが、あくまでもそれは店舗の商品を揃えるための施策でした。しかし、その発注データを、物流センターに渡せば、センターでの作業効率化になるのではないか、さらにその先にいる卸やメーカーに渡せば、もっと最適な在庫の管理が可能になるのではないかと考え、現在はサプライチェーン全体でのデータの利活用ができるよう検証しています。

DXは、よく「攻めのDX」と「守りのDX」を分けて考えられますが、われわれは、まず守りの部分である業務の効率化や業務プロセスの抜本的な改革を進めていかなければなりません。スーパーマーケットでいう攻めのDXは、カートやスマホのPOS、無人店舗などお客さまの購買の仕方自体を変える施策ですが、守りの部分を整えたら、攻めのDXに取り組んでいくつもりです。

仲田(三越伊勢丹):今年4月から社内で新規事業立ち上げ、スマートフォン向け仮想都市空間プラットフォーム「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」の事業企画担当をしています。新宿を舞台にした仮想都市をつくり、その中にお客さまにアバターとして入っていただくことで、買い物体験がバーチャルでできるというものです。

仮想都市の中には、バーチャル店舗として仮想伊勢丹新宿店も出店しています。店舗の中に商品がおいてあり、商品をタップすると値札が拡大され、Webマークを押すと三越伊勢丹オンラインストアなどに遷移して商品が買えます。アプリ内で、複数名でチャットなどを使ってコミュニケーションをとることができ、CG化された販売員のアバターがいるため、まるでリアル店舗にいるような買い物が可能です。

本事業は、単に店舗をバーチャル化させようというものではなく、お客さまが仮想都市内というバーチャルの空間で新たなライフスタイルを楽しんでいただきたいというものです。私自身振り返って、リアルな買い物を「楽しむ」というのはありますが、ECの買い物で「楽しむ」というのはあまりありませんでした。たしかにECというのは移動も時間も必要ないので便利ではあり、買い物の“マイナス”の部分を減らしたものだと考えます。しかし、ECにも買い物を楽しむといった“プラス”の部分を加えたいと考え、本事業を進めています。

バーチャル空間であっても、アバターやチャットを使い、家族や友人、恋人など誰かと買い物をしていただくことで、ECでも「昔、お爺ちゃんに買ってもらった〇〇だよ」というような思い出に残る、買い物体験が提供できると考えています。

──社内のDXを推進するために、重要なことはなんでしょうか?

山口:社内ではDX自体を理解できていないというよりも、本質を捉えられていない、ということを感じます。ですので、社内で話すときは「DXというのは、デジタルトランスフォーメーションである」という言葉を使って、意識づけをしています。

われわれスーパーマーケット業界が直面している課題は、大きく分けて3つあります。1つ目は、労働力の不足、ローコストオペレーションの限界による...

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