86年めを迎えるUCC上島珈琲に、昨年4月、キャリア採用で入社した染谷清史氏。以降、急ピッチで改革を進め、データ活用に本腰を入れはじめて約半年が経とうとしている。
「LINE」で顧客データ統合 無料キットは1日で配布終了
UCC上島珈琲がいま、グループの持つ顧客接点の連携を本格化させようとしている。先の2月、「上島珈琲店」(6月時点で110店舗)が運営する「LINE」企業アカウントに、ポイントカード機能を追加したのは、その端緒だ。7月からは、百貨店などに出店しているコーヒー豆販売店「UCCカフェメルカード」と「COFFEE STYLE UCC」も同様にレジを入れ替え、ポイントカード機能を「COFFEE STYLE UCC」のLINEアカウントに追加した。
スーパーマーケットなどの量販店チャネルでもLINEアカウントでの施策を準備中だ。
各チャネルの購買サイクル/来店サイクルや、購入金額を分析し、休眠顧客になりそうな人には、プッシュ通知でクーポンなどを配布し、刺激策とする考えがある。
一方で、データにまつわる新規事業にも着手した。3月4日にスタートした、利用者の好みに合わせたコーヒーを販売するサービス「My COFFEE STYLE」だ。
販売形式としては、サブスクリプション(定期購入)となる。専用Webサイトで「テイスティングキット」を申し込むか、UCCの店舗で直接4種類のコーヒーを飲み、味覚や感想を「My COFFEE STYLE」Webサイトに登録すると、好みに合わせたコーヒー豆が毎月届く。
開始日に募集した「テイスティングキット」の無料配布第一弾は、対象者1000人が、たった1日で配布終了となった。第二弾の1000人も応募が殺到し、早期に終了するなど、すべり出しは上々だ。
7月時点では、届くコーヒーは16種類。複数のコースがあり、コーヒー豆の量や全自動コーヒーメーカーのレンタルの組み合わせなどで異なる。嗜好の傾向は毎月集計し、長く利用するほど届くコーヒーの精度が高まる仕組み。販売するコーヒー豆の種類も増やしていくという。
こちらは、コーヒーに対する消費者の嗜好データを収集していこう、という取り組みだ。
目的の根底は同じでもそれぞれのデータには線を引く
当面、「LINE」を軸とした、グループ各チャネルの購買/来店履歴の統合と、「My COFFEE STYLE」は、異なる位置づけとして進行する。しかし、双方が同じくする根本的な目的は、直接接点で顧客とのより深い関係を築くこと」にある。
「実践の仕方としては切り分けています。購買/来店履歴のほうは既存の顧客に向けた、比較的短期的な、プロモーショナルな取り組み。他方の『My COFFEE STYLE』は長期的な施策であり、どちらかと言えば、新たなコーヒーファンを生み出す目的があります」と話すのは、UCC上島珈の染谷清史・マーケティング本部デジタル推進部部長だ。
「これは施策の評価の違いにも現れてきます。たとえば購買/来店履歴は、一定期間アクションのない顧客に対してアプローチした場合、来店があったか、顧客単価が変わったか、という点を指標として見ていくつもりです。さらに言えば、各チャネルで提供している価値は異なりますので、アクションがない、つまり離反したとみなす期間もそれぞれ異なってきます」(染谷氏)
たとえば「上島珈琲店」であれば、コーヒーなどの飲食メニューはもちろん、休憩や簡単な作業のための「居心地のよい空間」も提供していることになる。量販店であれば、商品そのものの価値だけでなく、既成品ならではの手軽さ、手に入れやすさ、価格面の訴求も含まれる …