今まで使われていなかった場面で、商品を使ってもらうことによって新しい市場を作りたい」──こうした考え方は、オーソドックスなマーケティング戦略である。冬季に売り上げが伸びるスープやお茶漬けを夏にも楽しんでもらいたい、ふだん飲む炭酸飲料をスポーツ時にも飲んでほしい。こういった新しい場面での使用シーンを増やすことに成功すると、大規模な売り上げ増が見込まれる。既存市場×新市場、既存商品×新商品という2軸で区分した、いわゆるアンゾフの成長マトリックスをもとにした戦略だ。
この方法は成功すると大きな競争優位をもたらす。しかし、強力な武器を用いるには、高いハードルがつきものだ。ブランドや商品が成功するのは、特定のターゲットや使用シーンに限定したためであることがほとんど。いったん受け入れられたブランドの使用シーンを大きく変えることは、ゼロから市場を作る以上に難しい。
まったく新しいブランドで新しい使用シーンを作ることも同じように困難だ。「今までにない使用シーンを生むこと」は、すなわち習慣を新たにつくることであり、相応の量、質を持ったマーケティング・コミュニケーションが必要となる …
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