「ワークウェアスーツ」は、一見、ビジネススーツに見まがう作業着だ。ことし3月発売以降、1カ月で法人からの問い合わせが300件以上寄せられ、月間目標の5倍を販売。また、個人向けEコマースサイト「ロコンド」では取扱う17万点の商品中、1位を獲得した。開発・販売のオアシススタイルウェア(東京・豊島)の中村有沙社長にヒットの背景を聞いた。
──スーツ型作業着「ワークウェアスーツ」はどういった背景から生まれたのでしょうか。
「スーツ型作業着を作ろう」という話が持ち上がったのは、2年前の2016年です。当初の目的は採用促進でした。当社のグループ会社、オアシスソリューションは、マンション業界の水道メンテナンス事業を手がけており、業界シェアナンバーワンです。水道事業の職人も約50人在籍しているのですが、若手が採用できずに苦戦していました。
もともと清掃・設備・建築業界は55歳以上がボリュームゾーンだと言われているのですが、オアシスソリューションは代表が41歳と比較的若く、社員も20~30歳代がメインです。それにもかかわらず、若手がなかなか採用できなかったのです。
そこで、若い人が「ここで働きたい」と思える、スタイリッシュな作業着を導入しようと考えました。最初は作業着のカタログを取り寄せてそこから選ぼうとしたのですが、なかなかピンと来る作業着がなく……。「若者に受けるスーツのようなスタイルで、作業ってできないんですかね?」という一言から、スーツ型作業着のアイデアが生まれました。とはいえ、社内にアパレルに関するノウハウは一切なかったので、アパレルの企業に相談しながら開発することになりました。
──「ワークウェアスーツ」にはどのような反響がありますか。
当初は社内だけで運用しましたが、最初の1カ月間は「これまでの作業着の方が楽だった」と、反対の声が多かったのです。従来型の作業着はカジュアルに着られるし、楽ですから。
一方、スーツ型の作業着は、ある程度ヘアスタイルを整えるなど、身だしなみもしっかりしないと、違和感が出てしまうのです。ただ、1、2カ月するうちに、メンテナンスのお客さまや、作業員の家族から、「新しい作業着のほうがいいね」と、好意的なコメントをいただくことが増え、作業員も喜んで着るようになりました。
さらに、他社からも「スーツ型作業着が欲しい」といったご要望を多くいただき、商品化を目指すことになったのです。事業会社として、オアシススタイルウェアを設立したのは、昨年12月。4カ月弱の準備期間を経て、ことし3月に「ワークウェアスーツ」を発売しました。発売1カ月で法人からの問い合わせが300件以上殺到し、単月目標の5倍を達成しました。正直、これほど反響があるとは思っておらず、4月時点で売り切れが続いてしまい、うれしい悲鳴でしたね。
法人購入がメインだろうと想定していたのですが、個人の方からのお問い合わせも少なくありません。4月からはファッションEコマースの「LOCONDO.jp」を運営するロコンドで一般消費者向けの販売もスタートしました。メンズスーツはロコンドのランキングでも常に上位にランクインしていて、4月度販売ランキングでは総合1位を飾ることができました。手応えは上々です。
スーツは一度着てみないと、なかなか購入に至らないものですが、「LOCONDO.jp」は、無料返品サービスがあり、試着ニーズにも応えられるのが大きなメリットです。「ワークウェアスーツ」はほかに類似商品がないため、「まず試着したい」とのご要望をいただくことも多いのですが、当社にはまだ実店舗がないため、対応できません。
しかし「LOCONDO.jp」で販売すれば、こうした課題は解決できます。7月には「Amazon.co.jp」での販売もスタートしました …