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AI・デジタルで変わる価格戦略

価格戦略の二大方針とテクノロジーによる進化

若林学(カタリナマーケティングジャパン)

カタリナ マーケティング ジャパンは、国内36の小売チェーンで、毎週のべ8800万人以上のレジ通過者に「レジ・クーポン」を付与するサービスを提供する企業だ。昨今では、イトーヨーカドーやイオンなど5213店鋪が参画する、ポイント付与アプリなども配信している。消費者の購買データから適切なクーポン配信・ポイント付与を行う同社の若林学社長が、プロモーションにおける価格戦略の展望を語る。

カタリナマーケティングジャパン 代表取締役CEO 若林学(わかばやし・がく)氏
外資系コンサルティング企業に10年間従事。その後、KSA日本事務所を開設し代表ディレクターを経て、2006年1月、カタリナマーケティングジャパン株式会社入社と同時に現職。

小売・メーカー・消費者 思惑は三者三様

ターゲティングであるとか、パーソナライズ(個別最適化)であるとか、テクノロジーの進歩が続いています。その要点は、個々の消費者に最も適した価格設定を目ざすということです。

しかし、単純に安ければいいというものではありません。消費者だけが得をするようではビジネスを継続させられないからです。

流通には製造業・小売業・消費者の三者がかかわりますが、それぞれの利害が完全に一致しているわけではありません。ここに「価格」のむずかしさがあります。

小売業の一番の興味は「Where(どこで)」。じぶんたちの店(チャネル)で買ってもらうことが最上の目的になります。

一方、メーカーの場合は「What(何を)」。じぶんたちの商品を買ってもらうことがトップに来ますから、極論を言えば、「どこで売れるか」は二の次なのです。反対に、小売業にとっては、売るものがどうこうより、まずじぶんたちの店で売れなくては何も意味がありません。

消費者はどうかと言うと、「Where(どこで),What(何を)とHow much(いくらで)の組み合わせ」。消費者それぞれの価値観により、高くても買うものもあれば値段が第一の場合もあります。

こうして、最上位の目的が、流通にかかわる三者で異なることを忘れてはなりません。その中で最適解を探すのが、価格設定の基本となります。

人工知能が進化させる 旧来の特売戦略

スーパーマーケットで言うと、ウォルマートのEveryday Low Price(エブリデー・ロー・プライス)戦略は、いわゆる特売をせず、そのためのコストをふだんの仕入れなどに生かすなどして、価格を一定レベルに抑えています。こうすることで、常に自店を選んでもらう理由づけになりますし、消費者にとっても、その時々で安価な商品を探し回ったり、時には手に入れられなかったりするリスクを下げるメリットがあります。製造業にとっても安定的に卸せるというのは利点かもしれません。

その反対はいわゆる特売で、英語ではHILO(High-Low price)と呼ばれます。商品や期間を限定し、廉価販売を行うことで集客の求心力とします。特売日には多くの人を集める効果がありますが、それ以外の日の集客が減るデメリットもあります。また、特売の告知をするための販促費もかかります。

この2つが、販売上の価格戦略としては大きな方針だったわけですが、2000年ごろからデジタル化が本格化し、インターネットが普及すると、サーバ上でソフトウエアやデータベースを活用するクラウドコンピューティングが発達しました。昨今では人工知能(AI)の利用もさかんになってきています。結果として、パーソナライゼーションの間口と奥行がずいぶんと広がってきています。

もしかすると、新たなHILO(特売)戦略というのも登場するかもしれません。EDLPの利点は、仕入れや物流、在庫管理、販売までの流れ(サプライチェーン)が安定することにもあるのですが、HILOでもサプライチェーンへの影響を最小化することができるようになる可能性があります。

そのキーワードが「プリディクション(予測)」です。いつ、何が、どこで、どれくらい必要になるか、を膨大なデータから精度高く予測できるようになれば、いまよりもっと効果的な特売ができるかもしれませんし、あるいは、個々の消費者に見合った値付け、ということも可能になるはずです。

今日ではAIがよく話のタネとなりますが、かつてのAIは、ゲーム内のキャラクターを動かすような、バーチャルでカジュアルなものでした。現在は、リアルで、かつ堅実なAIの開発が進んでいます。ゲームなら、語弊を恐れずに言えば、誤作動が起きても許容することはできます。しかし、自動運転のクルマではどうでしょうか。同じ一度の誤作動でも絶対に許されません ...

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