「東京2020大会エンブレム」のモチーフになった「市松模様」。江戸時代の歌舞伎役者の衣装に用いられたことからブームとなり、その名をとって市松模様として広まった。再発見されたのは明治。三越がほかの江戸模様と合わせ、売り出したのだ。さて、東京五輪は三度目のブームの引き金となるだろうか。
京都の街角。舞妓さんはもちろん、普段から着物の人も少なくはなく、新旧が渾然一体となっている街だ。
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浮世絵が火を付けた第一次市松模様ブーム
そもそも「市松模様」とは、どんな起源を持つデザインなのか。
古くは、「石畳」と呼ばれる紋様だったという。「市松」の名は、江戸時代・宝暦年間(1754年〜64年)を代表する歌舞伎役者の佐野川市松に由来する。市松の名を冠するようになったのは、近松門左衛門の『高野山心中』に登場する小姓・粂之介を佐野川市松が演じた際、石畳模様の衣装を着たためだ。
佐野川市松は美貌の役者として人気で、いわゆる二枚目役者。子役として12歳で初舞台を踏み、いわゆる美少年役を務める「若衆形」、女性役を務める「女形」として人気を集めた。子役として早くから人気を得た佐野川市松は、一説には …
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