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訪日販促の明暗 ポスト爆買いを生き残る

訪日客プロモーションは海外市場開拓の一手

岡村篤(野村総合研究所)

「爆買い」が消滅したと言われるが、その実態は─。野村総合研究所の岡村篤氏は、「イレギュラーな購買行動が少なくなっただけ、という印象。中国人1人あたり買い物総額もいずれ収束することを前提にビジネスを考えるべき」と説く。

多くの訪日外国人客で賑わう東京・銀座。中国・香港・台湾の中華圏から人も多く、2020年までにさらに増えそうだ。
(写真提供:Shutterstock.com)

訪日客の視座を持つ人材の発掘が不可欠

─訪日外国人客、特に中国客の「買い物代」(旅行中支出)の低迷について、どのような要因があるとお考えですか

岡村篤氏▶ 基本的に、為替の影響が大きいと考えられます。野村総合研究所が2015年7〜8月に訪日経験のある中国人6000人および訪日経験のない中国人1500人を対象に実施したアンケート調査「中国人訪日観光・消費調査」でも、「円高になった際でも日本に来たいか」「いままでどおり買い物をするか」との問いに対し、現実にもそうなったとおり、「買い物は控える」という答えが多くありました。

円高になれば、高額品に手が伸びなくなるのは当然ですが、もうひとつは、日本で商品を仕入れて中国で売る、代行販売業者と思われる人々への影響です。

前述のアンケート調査で訪日経験のある6000人のうち、こうした代行販売目的で買物をした比率は13.6%を占めました。訪日回数別で見ると、回数を重ねるほどその比率は上昇し、6回以上で16%を超えます。

彼らは買い物総額が高いので余計に為替の影響を受けます。中国政府による関税規制も彼らの動きに影響を与えていると思います。

一般的な訪日中国人客は、全体の買い物総額は2014年より下がりましたが、化粧品をはじめとした一般消費財、日用品は変わらず売れています。

「爆買い」が消滅したと言われますが、そもそもイレギュラーな購買行動が少なくなっただけ、という印象を持っています。日本製品に対する買い物意欲は、あいかわらず高いと思います。

ただ、長期的には、1人あたりの買い物総額は下がってくるはずです。というのも、1990年前後、日本人が海外旅行をした際の1人あたり買い物総額は約14万円でした。それが、およそ15年間で約4万円にまで下がりました。2015年の中国人の1人あたり買い物総額は約16万円でしたが、日本人がそうであったように減少していくと考えられます。

よって、「爆買い」はいずれ収束することを前提にビジネスを考えるべきだと思います。

日本政府観光局が訪日旅行者誘致の重点都市として位置づける15都市を対象に、2015年7月〜8月にかけてインターネットアンケートを実施。サンプル数は各都市500(5年以内の訪日経験なし:100、訪日経験1回〜2回:200、訪日経験3回以上:200)で、合計7500。

─訪日客の人数の伸びは、買い物単価低迷をカバーするでしょうか。

岡村氏▶ 今後も、内陸部から新たな顧客層が日本を訪れるでしょうが、どこまで伸びしろが残されているかは、さまざまな見方があると思います。「中国旅游統計年鑑(CNTA)2013年版」をひもとくと、香港・台湾・マカオへの旅行者を除いた中国人海外旅行客2972万人(当時)の中で、日本はすでに旅行先4位に挙がっていました。その後、訪日中国人が急増していますので、日本は中国からみてメジャーな旅行先であることは間違いありません。

今後、中国人がどれくらい来るか、個人的な推計値ですが、2015年の約500万人から、2020年には1000万人を大きく超え、2025年には2000万人を超える可能性もあると見ています。どんな方が訪日しているかというと、旅行会社や当社の上海オフィスの人間にヒアリングした範囲では、中間層が中心だということです。ですので、まずは中間層をどう攻めるか。そして富裕層をどう取り込むかがカギです。

一方、本当の富裕層は日本には来ていないといいます。単価を伸ばすなら…

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