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トップの現場力

「青山フラワーマーケット」展開企業のトップが考える「現場力」

パーク・コーポレーション 代表取締役 井上英明

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店舗で重視しているのは「雰囲気」「品ぞろえ」「価格情報」「サービス」の4点。季節の花を目立つ場所に置くなど、店の前を通る人が楽しそうだな、と感じるようにしている(写真は南青山本店)。

全国に、フラワーショップ「青山フラワーマーケット」を展開するパーク・コーポレーション。これまでの業界の常識を打ち破った仕組みで成長を遂げ、7月には法人事業のためのブランドを新たに展開。常にチャレンジを続ける同社の現場力とは?

顧客にとっての"現場"を想像して改善・工夫を重ねることが大切

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井上 英明氏
パーク・コーポレーション 代表取締役

1963年 佐賀県生まれ。早稲田大学卒業後、ニューヨークの会計事務所で働き、1年後に退職。88年 パーク・コーポレーションを設立し、93年に青山フラワーマーケット1号店を出店。現在、全国に86店舗を展開(2013年7月現在)。そのほか、2003 年にフラワースクール「hana-kichi」、11年にカフェ「Aoyama Flower Market TEA HOUSE」をオープン。今年の7月1日には、法人向けにグリーンを使った空間をデザインする新ブランド「parkERs(パーカーズ)」を立ち上げた。趣味はトライアスロン。

貴社にとっての現場力とは?

現場というと、どうしても「店舗」だけのことを思いがちです。しかし、フラワーショップの立場での「現場」と、お客さまの立場に立った「現場」とでは180度違います。だから、私がスタッフに対して常に言っているのは「お客さまの立場に立つ」ということ。お客さまが当店で花を買ってくださるというのは、何に対してお金を払っていただいているのか。それは単に「花を買う」という場面だけではありません。家に帰って、花を活けて、その空間と時間を楽しみ、最後には枯れてしまう。そこまでのことの対価として金額を支払っていただき、価値を感じていただいているのです。だから、例えば持ち帰ってから、家でビニールを止めていたセロテープをはがすとき、それがはがしやすくなっているか、花器に移し替えやすいようになっているか、そうしたことがどれだけできるかで、お客さまの満足度は異なります。

だから、店舗における「現場」ではなく、お客さまが花を楽しむ「現場」を想像して、そのための改善・工夫をどれだけできるのか、それが当社にとっての「現場力」にあたるのだと思います。


「お客さまの立場で考える」というのはよく言わることですが、その徹底が難しいと思います。貴社では、どのようにして重要性を伝えているのでしょうか?

私が言っているのは「エプロンを外して店舗を見なさい」ということ。これは、外からお客さまの目線で店を見なさいということです。例えば、店舗にはその時々のおすすめの花を書いて店外に出す黒板があるのですが、人の往来が多い通りにある店にもかかわらず、それを店の正面から見えるように置いてしまうことがあります。でも、考えれば分かるように、お客さまというのは店舗の前を横切って歩いていくので、正面から黒板を見る人なんていないわけです。さらに、店の前を数秒で通りすぎる人が読めないような文字量、小さな文字では黒板を置いている意味は全くありません。また、季節によってお客さまからの需要が高くて、よく売れる花がありますが、これを店舗のカウンターにいるスタッフが取りやすい位置に配置してしまっているケースもある。これも本来は、お客さまが「この花いいな」と目をとめて、店舗に入っていただくために、店舗の外側の最も目に付く位置に置いておかねばならないはずです。

なぜこういうことが起きてしまうかというと、やはり「店の都合」を優先してしまっているから。お客さまの立場になって満足度を高めていくためには、自分の店舗を客観的に見て多くのことに気付き、実践を重ねていく。それしかありません。


商品の仕入れもすべて店舗のスタッフが行っているのも、顧客目線を意識してのことでしょうか?

その店舗のお客さまはどのような層が多いのか、どんな好みなのか、それが分かるのは現場だけなので、それは当然のことです。だから、当社にはバイヤーがいませんし、店舗スタッフの裁量というのはとても大きい。仮に思ったように売れなかったとしても、バイヤーがいれば「仕入れた商品が悪い」と他人のせいにしてしまう。しかし、すべて自分が行うのだから「なぜ売れなかったのか?」「何が仮説と違っていたのか?」を考えるので、むしろ成長につながります。


フラワーショップに限らず、ほかの商業施設をたくさん見て回っていると聞きます。その中で、最近気になった点などはありますか?

細かいことですが、ある業種で当たり前だったサービスがほかのところにも広がっていると感じます。例えば、コンビニエンスストアでは、レジでお客さまが少しでも待っていると、すぐにほかの店員がレジを開けて対応します。それが、アパレルなどでも徹底されるようになってきました。少し前だと、ある程度行列ができたら対応、という感じでしたが、最近は「待たせない」ことをあらゆるところで徹底するようになっています。人は、あるサービスを受けるのが当たり前になると、それを業種によらずほかにも求めるようになる。だから、同じ業界のことばかり見ているのではなく、ほかの業界が何をしていて、それを生活者がどう評価しているのかというのは注意して見ています。

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