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DIGITAL TOPICS

運営の目的、体制、コンテンツづくりの指針は?これからの「オウンドメディア進化論」

キリンホールディングス × ニチレイフーズ

宣伝会議は2023年11月、九段会館テラスにて「宣伝会議マーケティングサミット東京2023」を開催。本記事では、事業活動に寄与するオウンドメディアのあり方について議論したセッションについてレポートする。

(写真左)
ニチレイフーズ
マーケティング部 広報グループ
原山高輝氏

(写真右)
キリンホールディングス
コーポレートコミュニケーション部
平山高敏氏

企業起点と社会起点

─(オンライン上の)オウンドメディアというとたくさんの種類があります。オウンドメディアと聞いて思い描くものも各々で異なりそうです。整理をお願いできますか。

平山:4象限に分けて整理すると分かりやすいです。図1では、縦軸としてコンテンツが読める場所が「オフィシャルサイト」なのか、「ソーシャルメディアのプラットフォーム」なのかで分けています。一方で横軸は「企業/商品起点」のコンテンツか、「社会/個人起点」のコンテンツかで分けました。左側はコーポレートコミュニケーション要素が強く、右側はマーケティング要素が強いメディアと言えます。

2010年代後半から、企業はステークホルダーから「社会の一員としてどう貢献できるのか」を強く問われるようになりました。その機運を受けて、オウンドメディアも、社会的な視座に立って企業の考えを伝えていく内容が増えてきました。

図1 オウンドメディアの4象限

オウンドメディアの役割は?

─企画運営しているオウンドメディアについて教えてください。

平山:私はキリンホールディングスのコーポレートコミュニケーション部で、note公式アカウントや、オウンドメディア「KIRINto」の運営、ソーシャルメディアの責任者をしています。Xは商品起点の公式アカウントもあれば、キリングループ全体の発信拠点としてのアカウントもあります。Instagramは商品の楽しみ方を知ってもらう内容です。

2019年に立ち上げた公式noteは、4象限の左上にあたります。従業員の声を丁寧に伝えることで、共感を育成するメディアコミュニティとしての役割を担っています。noteの中でも、Social(ソーシャルイシュー)、Process(経緯)、Personal(個人的な言葉)の3要素が入った記事はよく読まれる傾向にあります。2021年からは、社会起点でオピニオンリーダーと対談する「KIRINto」を公式サイト内に展開しています。

いずれのオウンドメディアも目指しているのは「だからキリンが好きなんだ」と思ってもらうこと。獲得したい企業イメージを貯めるためのメディア設計をし、広告では伝えきれないグループのビジョンをやわらかく伝え、メディアに合わせたコンテンツで企業としての人格の輪郭を表現することを意識しています。

企業によってはマーケティング寄りにオウンドメディア戦略を立てているところもあると思いますが、我々の場合はテレビ広告を中心にお客様との接点が取れているので、オウンドメディアは、広告では実現できない企業として伝えていきたいことをカバーする位置づけです。

キリンのオウンドメディア

2019年に開始したnote公式アカウント(画像)は、従業員の声を丁寧に伝えることで、キリンの人格を伝え共感者を育成する役割を担う。読み手が、商品や活動の想い、プロセスを知ることで、「キリンの今後の取り組みに期待し誰かに薦めたくなる」メディアを目指す。そのほか、XやInstagram、公式サイト内に「KIRINto」も展開する。

原山:私はニチレイフーズのマーケティング部広報グループで、企業広報、商品広報を行っています。オウンドメディア「ほほえみごはん」やXやInstagram等のウェブ業務全般の企画運用を担当しています。

私たちの場合は、4象限の右側にあたるマーケティング寄りのオウンドメディアの使い方をしています。ニチレイフーズは冷凍食品の会社なので、当然ながら冷凍食品を使っていただきたいのですが、その手前には「冷凍」という機能自体に親しんでいただきたい、という思いがあります。というのも、冷凍食品は店舗の中でも冷凍ショーケース内にしか置くことができませんから、お客様との接点も限られます。一方でオウンドメディアであれば、いろいろなところで接点を持てるだろうということで2016年にオウンドメディアの「ほほえみごはん」がスタートしました。冷凍に関しての情報提供をすることで、冷凍が食のお悩み解決になること、「冷凍食品はニチレイ」と覚えてもらうことを目指しています。

食を扱うメディアなので、シズル感も大切にしながら、UI・UXにも注意しながら運営しています。記事の内容は、「白菜の冷凍保存法」のような暮らしに役立つ記事もあれば、他社とのコラボや、漫画で楽しく読めるレシピ紹介もあり、楽しくお伝えすることを意識しています。

平山:ターゲットが明確で課題解決型のオウンドメディアですね。

ニチレイフーズのオウンドメディア

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