日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

社内を巻き込み持続成長につなげる企業ブランディングのノウハウ

「進化・変革」を具現化する110周年事業を展開 3つの戦略的なアプローチで企業イメージ向上に貢献

タカラスタンダード 植村 真

企業価値を高める有効な機会となる「周年事業」。しかしいくらリソースをかけても、「社内での意思決定が上手くいかない」「話題にならない」など成果につながらないこともある。社内外へどのようなアプローチをすれば、期待する成果が得られるのだろうか。

システムキッチンなどの住宅設備機器メーカーであるタカラスタンダード。創業から110年を迎えた2022年に「110周年事業」を展開した。周年事業を率いたのは、営業本部営業企画部次長とコミュニケーション推進グループ長を務める植村真氏。2020年12月頃から広告会社を含めたグループメンバーでアイデア出しをはじめ、翌年8月頃に企画をブラッシュアップさせて経営層に提案。企画はほとんど採用された。

成功体験つくり経営陣巻き込む

実施した企画は、110周年記念CMやポスター、特設サイト「110の水まわりサイト」の制作をはじめ9つ。多数の企画をスムーズに進行できた要因について植村氏は「経営層からの理解を得る」「全従業員を巻き込んだ一体感の醸成」「メディアへの対策」の3ポイントを挙げる。

1つ目のポイントについては「経営層にブランディングの重要性、つまり会社の認知度やイメージを上げることが業績に好影響を与えると理解してもらうことが重要でした」と植村氏。理解を得られた背景には、2019年より企業のブランディング戦略を強化した際の成功体験があった。

同社は2000年代までは、ブランディングを積極的に展開してこなかった。業界全体に多くのメーカーが存在したため消費者が差別化しづらく、メーカー選びは工務店が担うケースがほとんどだったためだ。しかしリーマンショックでメーカーが淘汰され、スマートフォンも普及。消費者自身がメーカーを決める時代が到来し、同社も2019年よりブランド戦略を強化する方向に。

施策の一例として、2019年にテレビCMに初めてタレントを採用。土屋太鳳が出演するCMやウェブ広告の連動施策で、メディア露出を増やした。「保守的なタカラスタンダードがCMにタレントを起用したと業界内でも話題になりました」と植村氏。会社の認知度が上昇し、製品の出荷台数にも好影響をもたらした。

さらに「『変化』や『革新』に対して、経営層がポジティブな印象を抱くようになり、ブランディングに対する経営層の理解が得られやすくなったという副次的な効果もありました」という。

こうした背景から、周年事業を「伝統を振り返る」内容ではなく、今後を見据えた「会社・経営層の思いを発信する」方向性に設定。「中期経営計画2023」でも重視する「拡大より変革・進化」「今後の期待感を醸成し社員が誇れる会社へ」といった思いを伝える機会と位置付けた。

そこでキャッチフレーズは...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

社内を巻き込み持続成長につなげる企業ブランディングのノウハウ の記事一覧

コンテンツ制作・発信のハブとなるオウンドメディア活用術
「進化・変革」を具現化する110周年事業を展開 3つの戦略的なアプローチで企業イメージ向上に貢献(この記事です)
「パーパス」の言語化と浸透に 求められるクリエイティブ視点
「社内」の活動を「社外」へ積極発信 インターナル起点の新・広報戦略
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する