宣伝会議では、9月3日〜4日に「アドタイ・デイズ10th Special Days」を開催した。ウェブメディア「AdverTimes.」の10周年を記念して行われた今年は、62人が登壇。9月10日に開催したオンラインイベント「アドタイ・デイズ オンラインEXPO」と合わせて5504人が参加し、広告界の“今と未来”を考えた。
コロナ禍でも安定した売上を得るためのカギのひとつが既存顧客。5年以上前からコミュニティの構築に力を入れてきたカゴメとポーラは継続的なファンとの交流で、長年愛されるブランドをつくりあげている。
売上の多くを占めるのは既存顧客
──2社は、ファンとのコミュニケーションに主軸を置いていますね。具体的な取り組みは。
細川:カゴメは2015年4月15日に、「みんなとカゴメでつくるコミュニティ」をテーマに、ファンとカゴメの継続的な交流を目的としたファンコミュニティサイト「&KAGOME」を開設しました。このコミュニティは、現在も活性化しています。
コミュニティを立ち上げたのは、2015年に起こった糖質制限ブームによる、野菜飲料市場の縮小がきっかけでした。野菜生活も「ジュース」に分類され、商品が角砂糖と共に並べられた写真がネットに流れたことにより、野菜飲料に関してネガティブなイメージが世の中に浸透してしまいました。
同時期に購入者分析を行ったのですが、事業の売上を支えているヘビーユーザーの方たちの購入率が減少していることが分かりました。そこで、ヘビーユーザーの方たちに継続して商品を購入していただくにはどのようにしたら良いのだろうか、と考えた結果、カゴメとの距離をより近づける「&KAGOME」を立ち上げることにしました。現在も顧客構造を分析しているのですが、上位2.5%のお客さまで、売上の30%を占める構造ということが分かっています。
菅:当社のケースも似ています。パーソナライズドスキンケアブランドの「APEX(アペックス)」は誕生から31年経ちますが、ブランド売上の多くがロイヤルユーザーの購入に支えられています。「APEX」は肌分析に基づいて顧客1人ひとりの肌状態に合わせたアイテムをカスタマイズするため、肌を分析する際にリアルな場で体験しなければなりません。購買に至るまでには必ず来店していただくというハードルがあります。
そのため、当初からKPIで人数を追うのではなく、少人数のファンの方たちとブランドを一緒につくりあげる“共創スタイル”をつくることに主眼を置いていました。そのため、2016年の立ち上げから、少しずつ拡大し現在では1000人規模の超コアなファンを集めた「APEX LOUNGE」というコミュニティを立ち上げました。現在のアクティブ率は10%〜15%程。ファンの方々と濃密な関係を築くことによって、マーケティングに活かしています。
「売上の高さ」が前提条件
──両社の「ファン」の定義とは。
細川:カゴメの中で「ファン」という言葉が使われるようになったのは、2000年頃に個人株主さまを「ファン株主」と呼んだことが始まりです。なお、当社における「ファン」とは、購入金額が高く、かつマインドシェアの高い方を指します。
そのファンが離脱しないために、「能動的にファンとつながること」をポイントとしています。そのため、KPIのメインは会員数ではなく、アクティブ率です。2020年7月現在、会員は3万7335人、毎月何かしらのアクションを起こされている方が12.9%いらっしゃいます。
ファンコミュニティの維持においては、3つの点を大切にしています。ひとつ目は、飽きさせないコンテンツ。運営からのテーマ提示や記事は月に6〜8件ありますが、その中からメルマガでも月2〜3件発信しています。それとは別に、クイズや商品レビューなどのライトに参加できる企画も取り入れています。
2つ目は、等身大のカゴメを見せる点です。社員が直接登場し、カゴメの“生の情報”を提供しています。3つ目は...