CMプランナーとして、これまでに1500本以上ものCMを企画・制作してきた福里真一さん。2018年は、また新たなスタートの年になるという。
「なんとなく独立」の理由は、この先も限界までCMをつくり続けるため
──2018年、福里さんに大きな変化があると聞きました。
2018年1月1日から私の会社ワンスカイが電通グループを離れて、完全独立することになりました。とはいえ、会社名も場所もメールアドレスなどもそのまま。電通さんとの良好な関係を維持したままの"超円満独立"ということを強調しておきます(笑)。独立するときは、みなさん、「新しくこういうことをやりたい」「こういう志をもって独立する」と宣言しますが、私にはそういうかっこいい感じの抱負はまったくないので、キャッチフレーズをつけるとしたら「なんとなく独立」。
ただ強いて言うと、仕事の間口を広げておきたい、とは思ったんですよね。すべての会社の、すべてのジャンルの仕事を、自由に引き受けられるようにしておこう、と。で、これからもあんまりベテラン然とはしないで、バンバン仕事を引き受けて、「ああー、やりきったなー」という、自分なりの限界まで、仕事をしていきたいと思ったんです。
──限界まで、ですか。
はい、まあ、仕事以外にたいしてやることもないんですよね。夜早めに家に帰ってもなんとなく本を読んでいるだけなので…。私は1992年入社で、社会人歴で言うとちょうど勤続25年。缶コーヒーBOSSも、いま「勤続25年」キャンペーンをやっていますから、BOSSとは同期なのですが、とにかくもうここまでに25年もやってきてしまったんだな、と思うんです。その年月は人生においてけっこう長い年月なわけですから、だったらとことんまでこの仕事を全うしよう、と。
それに、私は1本のムービーで世界中を驚かせたい、みたいなタイプではないので、普通の人たちが日々のくらしの中で普通に接する広告たちが、全体的におもしろくなるといいなと思っていて、そのことに自分が貢献したいとも思っている。そのためには、間口を広げて、なるべくたくさん仕事がくる状態をつくっていった方がいいな、とも思いました。ですので、いまこれを読んでいる、まだ私と仕事をしたことがない会社のみなさま、なにとぞよろしくお願いします!
──福里さんはCMプランナーの印象が強くありますが、CDとしてはどのようなディレクションをするのでしょうか。
CMプランナー、CDのどちらかひとつとは決めず、基本的に求められることをやっていますし、これからもやっていきたいと思っています。CMプランナーとしてCMを企画するのは、数少ない私が得意なことのような気がするので、これからもやっていきたいですが、CDとしても、けっこうできちゃうぞ自分、とは思っているんですよね(笑)。
例えば、最近で言うと東洋水産の「マルちゃんQTTA」は私がCDで、若手のスタッフの方たちと仕事をしているのですが、私のみなさんの企画への指摘が、けっこう的確(笑)。まあ、周りからそう言われているわけではなく、自分でそう思っているだけなのですが、私の的確な指摘により企画がじわじわよくなっているという実感が自分の中であります(笑)。
そういう意味では、最初に目が醒めるような方向性をズバッと出すというよりは、出てきたアイデアを徐々によくしていくタイプのCD、という感じでしょうか。あと、気が小さいですから、非常に腰が低いCD、ということは言えると思います(笑)。
──BOSSの「宇宙人ジョーンズ」をはじめ、福里さんが手がけるCMは長く続いているものが多くあります。
「宇宙人ジョーンズ」が12年目、「エネゴリくん」も約10年続いています。樹木希林さんの富士フイルム「お正月を写そう」は約20年。基本的に「広告のシリーズは長く続いたほうがいい」という思いはあります …