ディスラプターやスタートアップ、さらに世界のメガブランドまでが実践する「パーパス・ブランディング」。なぜ今、世界中から注目されているのか。そして、その正体、仕組みとは何なのか。パーパスの力を生かし、ブランドをエレベートするための知見を全6回で解説する。
経営理念の中心が変わる ソニーの経営方針で語られたこと
今年5月に行われたソニーの経営方針説明会で、ひとつの動画が紹介された。冒頭のシーンに現れたのは「WHAT IS OUR PURPOSE?」(私たちは何のために存在するのか)の問いかけだ。
ソニーの吉田社長はこの説明会で「1年を振り返り、私が行った最も重要な仕事はパーパスの定義だ」と語った。そのパーパスとは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というものだ。
海外ではすでに、ソニーのように経営理念の中心を担うものとして、パーパスを制定するケースが増えている。コンシューマー・グッズの分野では、P&Gとユニリーバがいち早くパーパス経営を実践。二輪車分野では、ハーレーダビッドソンが戦略の土台を「私たちは個人の自由という夢をかなえる」というパーパスに変えている。
ホテル業界では、ハイアットが「私たちは思いやりの心で、相手の『最高』を導き出します」というパーパスを設定し、航空業界においては、ユナイテッド航空がソニーと同様にパーパスとバリューズのもと、経営の舵を取っている。
近年では海外スタートアップでもパーパス経営の実践が見られる。アマゾンに買収されたザッポスは顧客サービスで有名なEコマース企業だが、パーパスを中心に企業文化を醸成し経営している。また日本でも利用者の多いエバーノートも2018年に実施したブランド・リニューアルの際に、パーパスを定義している。
このように、産業と企業年齢にかかわらず、経営理念にパーパスを取り込む企業が続出している。10年前まで経営の理念体系といえばミッションとビジョンが名コンビとして常識だったが、これほどまでに多くの企業が、ここにきてなぜパーパスを選んでいるのか。今回は、パーパスの定義と共にその理由を探ってみたい …