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求められるスポーツの進化形

テクノロジーで際立たせるパラスポーツの魅力

澤邊芳明(ワントゥーテン )

車いすロードレースと、ボッチャのそれぞれの魅力を、クリエイティビティとテクノロジーで抽出した、「CYBER WHEEL」「CYBER BOCCIA」は、2017年の発表から3年で、計2万人以上の人が体験した。来年の東京オリンピックそしてパラリンピックに向け、市井の人々とアスリートの認識のギャップを埋めるプロジェクトのこれまでとこれからを、ワントゥーテンの澤邊芳明社長が語る。

「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」のイメージビジュアル。車いすロードレースの「高速な疾走感」を際立たせることを意識した。

いまだなじみのないパラスポーツ どのようにして理解を深めるか

「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」や「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)」らサイバーシリーズは、パラスポーツ普及にまつわる課題を解決するためのコンテンツとして生み出したものです。

その課題とは、パラスポーツ体験会などで認知は高まっているものの、競技自体への興味や関心、ひいては理解を深めるためのコミュニケーションが困難だったということでした。

一般的なパラスポーツ体験会に参加した方々の感想を見ると、どうしても操作の難しさや道具の珍しさなどにフォーカスしてしまうようで、「こんなに難しいんだ」「これは大変だね」といったものが多いのです。

他方、観戦している側も気持ちが高まる競技性や、それに懸ける選手の熱量、そして彼ら、彼女らの高度な身体能力などは伝わりづらい。そこにジレンマを感じていました。

いくらまじめに体験会の数を重ねても、どうしても越えられない壁がある。「このままではパラスポーツは、いつまでたっても“障害者”の競技という狭い見られ方のままなのではないか?」という懸念の半面、次第に「クリエイティビティでその壁をジャンプできるのではないか」という考えが、私のなかでふつふつと湧いてきました。2017年のことです。

パラスポーツ本来の魅力を伝えるため、体験の精度やルールなどは一切変えないことを制約としながら、クリエイティビティを働かせる。フェイクではない、ありのままの競技の輝きを抽出し、一般の方々にも理解できるエンターテインメントとして具体化する。こうしたことをミッションに定めました。伝えたいのは競技や選手の魅力ですから、似て非なる、ただ楽しいゲームにしてしまっては意味がないわけです。

まずは「サイバーウィル」に取りかかりました。パラリンピアンの意見を仰ぎつつ、ワントゥーテン、TOW、ギークピクチュアズの3社が開発に携わっています。

車いす型のライド(乗り物)は、実際に選手が使用している三輪の車いすロードレーサーを購入し、サイズなどを計測しながら、未来を感じさせるデザインを施しました。車いすそのままに、ハンドリム(駆動輪を回す手すり)をこぐと、バーチャル・リアリティ(VR)空間を疾走できます。VR空間は「2100年の東京」をテーマに未来都市をイメージしました。コースは400メートルに及びます。

もうひとつの「サイバーボッチャ」は、「サイバーウィル」の半年後に発表しました。パナソニックの協力を受けながら、ワントゥーテンが開発しました。

ボッチャは、「ジャックボール」と呼ばれる白い目標球に向け、赤か青の、自分のカラーボールを投げたり、転がしたりして近づける競技です。“氷上のチェス”と称されるカーリングに似たルールを持つ「ボッチャ」の魅力は、「戦略性」です。

非常に苦労しましたが、投球のたび増える青と赤6球ずつ、計13球の位置をリアルタイムに計測する、センシング技術を開発しました。目標球との距離を自動で算出し、コートに投影したり、ポイント計算を行う「サイバーボッチャ」は、競技としてのクールさを引き立たせることを意識しています。

サイバーシリーズが証明したパラリンピアンの凄さ

パラリンピアンも健常者も同じように対戦でき、選手のすごさを伝えるための装置として制作したサイバーシリーズですが、実は開発者としても大きな驚きがありました。

実際に観戦してみると、想像を超える圧倒的な差があることがわかったのです。パラリンピアンの身体能力が高いことは理解していたつもりでしたが、一般の人と同じ土俵で戦う姿を目の当たりにしたことはありませんでした。最も驚愕したのは実は私だったかもしれません。

たとえば「サイバーウィル」なら、体験者約1万人のうち、健常者の平均タイムは1分ほど。運動能力に自信がある人でも40秒台です。一方、どの競技のパラリンピアンでも、20秒〜30秒台の記録を出していました。これは私も予想しておらず、侮っていたと言わざるを得ません。まったく比較にならないほど、ぶっちぎりに早いのです。

「サイバーボッチャ」でも同様のことが起きました。イベントなどでメダリストと一般参加者が対戦してみると、パラリンピアンのレベルがあまりに高すぎて勝負になりません。「少し手を抜いてほしい」と伝えても、選手は全力で挑んできます(アスリートが一般人に負けるわけにはいかないのは、どのようなスポーツでも同じですね)。とはいえ力量に差がありすぎるのです。

健常者が太刀打ちできないようすを目撃した方々の認識は、大きく変容していることと思います。当初想定していたよりも大きな成果であり、パラリンピアンの持つ超人性を強力に可視化できたのではないかと自負しています …

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