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学生が海外で行方不明、情報が少ない中で広報がとるべき対応は!?

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

2016年12月、大学生が留学先のフランスで姿を消した。足取りがつかめないまま年が明け、在籍する筑波大学は在学生向けに、取材を受けた場合の注意点などをメールで配信。ネットメディアがこれを取材に非協力的な姿勢などとして記事にした。

記事はまず、1月5日朝に2人の副学長から在学生宛てに届いた一斉メールを紹介している。メールは2通あり、ひとつめが、大学は不明学生を知る学生や教職員からのコメントを求めるマスコミの要請に拒否を貫いていること。その理由として、家族の心情、捜査段階であることや平穏な学習環境保持への配慮があること。またマスコミからの問い合わせなどで困ることがあれば遠慮なく広報室に相談を、というもの。もうひとつのメールは、情報の第一の提供先はメディアではなく捜査当局です、といった内容だ。

記事では、こうしたメールを「要約」すると、「マスコミは迷惑な存在」と受け止め、「メディアに対する敵意に近い感情が伝わってくる」などとしている。この記事がYahoo!ニュースに掲載されたことから、多くの人がコメントしたりシェアしたりしていた。

メールの内容自体は良識的であり、記事の解釈には無理がある。実際、記事の反響を見てもそう受け止めた人が多かったようだ。一方で、記事の内容は別にして、ここには広報担当として確認しておきたい重要な教訓がある。

情報がない時に関心のピーク

まずネットコンテンツはアクセス数偏重の傾向が強く、事件などの際にはその時に急増する「読者ニーズ」が記事を生む側面がある。ところが、現在進行形の事件の場合、広報には発信できる情報がない。捜査当局と協力している時にはもちろん、情報自体をつかめていないことも珍しくない。そんなタイミングに世間の関心がピークを迎え、その時に出てきた情報をもとに、様々な論調と質の記事が次々と出ていくということを踏まえておかねばならない。学生向け一斉メールも、それ自体がネタにされる、というわけだ。

ポリシーを明確にして継続発信

情報が限られる中、広報には一体何ができるのだろうか。筑波大学は12月に記者会見を開いたほか、「フランス留学中の本学学生が行方不明になっている事案について」と題し、情報収集に努めていること、無事で見つかることを願っていることなどを書いた学長名のお知らせをウェブサイトに公開している。が、それだけに留まっている。記事にあったメールは、在学生向けのページにも掲載されていない。

一斉メールのような全体宛ての情報発信は、広く共有されるべき内容でもあり、ウェブ上でも参照できるようにしておくことが望ましいし、大学側としても「情報収集に努めている」とするなら、新たな情報が得られ次第お知らせしていく、といった姿勢と文言が欲しいところだ。大学では現在、海外渡航に際してオンラインによる海外渡航届の登録を学生に求めている。こうしたシステムが「いざという時」に情報確認を助けることなどを知らせる機会でもある。いざという時、また情報がない時にこそ、日頃大切にしている取り組みを振り返り、丁寧に伝えられるようにしておきたい。そして何より、1日も早い事件の解決を願っている。

ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)

国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。米コロンビア大院(国際広報)卒。日本パブリックリレーションズ協会前理事。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ50万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。最新刊は『頭のいい一言「すぐ言える」コツ』(三笠書房)。
公式サイトは http://tsuruno.net

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