国内の大手広告主と共に「テレビスクリーン測定ワーキンググループ(WG)」を発足したREVISIO(リビジオ)は、テレビスクリーンでの視聴実態に着目し、「実際にどれだけアテンションを獲得できているか」を横断的に捉えるデータを提供することで、広告主が最適なメディア配分を考えやすくする環境を整えるべく挑んでいる。多様化する視聴環境の中で、テレビスクリーンにおいてはどのようにデータの計測基盤を整え、広告主が活用できる環境を築くか。WGに参加する日本マクドナルドの加藤邦浩氏を交えて、REVISIOの取締役である河村嘉樹氏とアドバイザーで元P&Gメディア統括の日髙由香子氏に話を聞いた。

業界で整備を進めるべきデータとプランニング環境
REVISIOは2024年11月、「リーチロスを正常化し、CTVを含むテレビ広告のデータを整備して業界全体を前進させる」ことを目的に、国内の大手広告主各社と共に「テレビスクリーン測定ワーキンググループ(WG)」を発足。2025年1月に第2回の会合を開催した。
REVISIOがWGを立ち上げた背景には、テレビCMにおけるデータ測定とCTVにおける課題がある。まず従来はテレビCMに関わるデータと言えば、視聴率に大きく依存してきた。しかし視聴環境の多様化やデジタル広告の高度な計測と比べると、視聴率だけでは「タイムリーかつ詳細に取得しにくい」「カバー範囲や粒度が限られている」という問題があり、PDCAを高速に回したい広告主にとって、大きなフラストレーションとなっている。
REVISIO取締役の河村嘉樹氏は「デジタルシフトが進む今、テレビCMの効果測定だけが曖昧なままではいられなくなってきている」と話す。またREVISIOのデータによれば国内でもCTVの視聴時間は拡大しているものの、現状のテレビとCTVの広告投資の配分を考えると、逆にCTVで獲得できるリーチの機会を損失しているという課題も浮かび上がってきた。
元P&Gで長年広告メディアプランニングに関わってきたマーケターでありREVISIOのアドバイザーである日髙由香子氏は、その理由について、「共通指標がなく予算をどれだけ割り振ればいいか分からない」「CTV内の広告枠が少ない」の2点を挙げ、「CTVが大きく成長している米国並みに伸びるには、指標整備や広告枠拡大への対応が不可欠」と語る。
「米国と同様、日本でも地上波とCTVを合わせた総合的なリーチ測定の需要はますます高まるでしょう。しかし、デジタル広告ほどの詳細データや共通指標がないため、多くの企業にとってメディアプランが組みづらい状況です。視聴者は確実にCTVを見ているのに、広告枠が少ないために広告主は機会を逃し、媒体側も収益化できていない。こうした状況を私たちは『リーチロス』と呼んでいますが、2025年はAmazon Prime VideoやNetflixが広告対応プランを本格化させる見込みもあり、大きな転換期になるかもしれません」(日髙氏)【図】。
図 CTVがテレビスクリーンの中で占める割合

出典/REVISIO、電通、サイバーエージェント、eMarketer
こうした課題を踏まえたうえでREVISIOは、データとプランニング環境の整備を業界全体で進める必要があると考え、WGを発足させた。河村氏は「まず広告主が中心になり、課題を共有し、解決策を一緒に考える機会が必要だと思いました。予算を持つ広告主が業界全体を前に進める場をつくりたいのです」と説明する。
データに基づく意思決定を支援 業界全体の底上げを図る
さらにREVISIOは独自の人体認識技術を用いて、自然視聴下のTVスクリーン(地上波+CTV)における注視データを取得できる国内唯一の企業である。関東・関西合わせて約2600世帯に独自開発のセンサーを設置し、誰がいつテレビの前にいて、どの番組や広告を視聴しているかを自動的に識別する仕組みを持つ。
これにより広告効果をリアルタイムかつ正確に把握し、効果的な広告配信を行うための分析ソリューションを提供している。
こうしたサービス背景から、REVISIOの既存ユーザーをはじめ、多くの企業がWGに関心を寄せているという。WG参加企業の1社である日本マクドナルドの加藤邦浩氏は、「2015年頃からREVISIOと仕事をしており、複数企業でアイデアを出し合うほうが業界全体を改善できると思い参加しました。CTVは今後ますます大きくなるはずなので、初期から関わることは貴重な経験です」と語る。
加藤氏によると、日本マクドナルドはテレビとCTVを同じ指標で測定している。「当社ではREVISIOのデータを使い、質と量をそろえて同一条件で比較できるよう工夫しています。今後、すべてのタッチポイントを同じKPIで測定できれば、広告主は予算を最適に配分しやすくなり、媒体側も良質なコンテンツ制作に投資しやすくなるはず。そこで得た知見を社内外に還元し、業界全体の底上げに寄与したいと考えています」(加藤氏)。
2024年12月に行われたWG初会合では、参加企業からクロスプラットフォーム活用に関する課題が共有され、組織や予算がテレビとデジタルで分断されているため、CTV広告が「デジタル配信の一部」にとどまる現状が浮き彫りとなった。第2回会合では、複数企業のキャンペーンデータを匿名化して収集し、重要視すべき指標について議論。今後はサマリーをプレスリリースで公表し、議論を拡大する予定だ。参加企業からは「ぜひ第3回も開催してほしい」という要望が多く、テーマ設定を検討中だという。
会合を振り返り、日髙氏はWGの今後について次のように話す。「一般的に、指標は放送局との契約内容などビジネスゴールとは直接関係しない要素が優先されがちだと感じますが、どのメディアがどのくらいゴールに貢献するかといったことを、データに基づいて冷静に判断できる体制が理想です。日本マクドナルドさんのように高度なメディアプランニングを行える企業はまだ少ないので、業界全体の底上げも必要だと感じます。WGを通じて他社とノウハウを共有し、どの指標を追いかけどう改善するのか、理論的なプランニングを広げたいですね」。

お問い合わせ
REVISIO株式会社
〒100-0004 東京都千代田区大手町1丁目6番1号大手町ビル
TEL:03-6268-8056
URL:https://revisio.co.jp/