第一線のマーケター・クリエイターが明かす、キャリアアップの奥義。今回は、Mizkan(ミツカン)で執行役員 取締役 マーケティング本部 本部長を務める槇亮次さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q. 大学時代は農学部の専攻だったそうですね。
はい。農学部農芸化学科でした。卒業後は培養テクノロジーなどの研究者や、メーカーの開発職に就く人が多いのですが、私が社会に出た1999年は就職氷河期の真っただ中。そういう求人はほとんどありませんでした。説明会でのマーケティングの話が面白かったので、ネスレ日本(当時はネスレ マッキントッシュ)に入社。広島の中四国営業所で、スーパーや卸業者を回るルートセールスの仕事を始めました。
当時から明確にマーケターを目指していたわけではありませんが、他の人とは少し違う営業をしていたと思います。一般的なルートセールスは、スーパーの本部と商談して、あとは大型店舗を回るのみ。しかし私は、店舗とお客さまの特徴を見るのが面白かったので、担当エリアの全店舗を回るようにしていたんです。ある時、売上が非常に悪いスーパーを担当することになって。それまで多くの店を回って体感した、「場所によって消費者像が変わる」を提案に生かすチャンスだと思い、約40店舗それぞれに異なる販促企画を立て、あれこれ試していきました。
「あいつは典型的な営業と違うぞ」と思われたのでしょう。3年後に本社に引き抜かれ、全国の店頭販売戦略の担当に。2004年に「エアロ」ブランドマネージャー、2018年にスイス本社でお菓子部門のグローバルブランドマネージャーを経験しました。
Q. 2度もの海外赴任から学んだことは何ですか?
2006年にオーストラリア、2018年にスイスへ赴任しました。
そこで学んだのは「消費者は違う。でも共通点もある」ということ。例えば「キットカット」のバーは、2連の仕様が浸透しているのは日本だけ。多くの諸外国では4連です。日本も「キットカット」の上陸当初は4連でしたが、日本人好みの小さいサイズの方が売れたんです。ところが、大きめの1本バータイプは、諸外国と同じく日本でも売れました。
営業時代に体感したように、確かに消費者は場所ごとに全然異なるニーズを持つ。一方で、世界中で共通する点もあるのでは、と。私にはそっちの方が興味深く思えました。
そこで、帰国して取り組んだのは、国外で成功したアイデアを日本向けに仕立て直すこと。大人の需要を拡大した「キットカット オトナの甘さ」シリーズや、シーズンギフトの市場を開拓したキャラクター型キットカットを開発しました。
Q. そこからなぜ転職をしようと考えたのですか?
はたから見ると、私の履歴書ってかっこよくないですか(笑)? 外資系企業の本社に赴任してグローバルブランドマネージャーを経験した日本人は、そう多くないですから。でも、私にとっては最上の幸せというわけではありませんでした。自分の価値観と向き合ってみようと思い立ち、人生の出来事と幸福感を可視化するライフチャートを作成。すると「消費者のための仕事ができた」と心から思えたときに、充実感を得られるとわかったんです。
2014年に「キットカットショコラトリー」というチョコレートのブティックを立ち上げる話が出た際、社内では、前例がないと否定もありました。しかし、監修を依頼したパティシエの高木康政さんとは「いま消費者は生活の彩りを求めている。喜ばれる企画だから絶対に実現させよう」と意見が一致しました。会社が違っても、同じ方向を目指せたのがすごくうれしくて。幸福度グラフもぐっと上向きになっていたんです。
ああ、これだなと、今後は消費者と向き合う仕事を追求しようと決めました。
Q. 数ある選択肢の中でなぜMizkanへ?
そんな折にMizkanに声を掛けてもらい、企業理念にぐっときたんです。「買う身になって まごころこめて よい品を」、そして「脚下照顧に基づく現状否認の実行」。常にお客さま第一で、現状を改革し続ける考え方は、営業時代から私が大切にしてきたことと、ぴたりと重なったのです。
また、高木さんとの仕事を通じて、消費者により高い価値を提供できる、協業の面白さに目覚めました。転職するなら、いろいろ協業が試せるように、商品をたくさん持っているとか、ビジネスに幅がある事業会社がいいと思っていました。
2023年に入社し、マーケティング本部長として180人ほどの組織を束ねています。みんな、会社を良くしたいという思いにあふれた人ばかり。でも、あえて厳しく言うなら、顧客理解が不十分だと思います。
いまMizkanの商品Aが売れているのはなぜか。ある会議で「消費者がミツカンの商品BからAに流れた」との分析が出ましたが、それではメーカー視点なんです。「例えば、うどんを簡単においしくつくりたい人が増えて、その課題を解決できるのがBではなくAだった」など、消費者のニーズと課題を真ん中に置いた分析を出してほしいのです。
今後も組織に消費者視点が浸透するまで取り組みます。私は「買う身になって」という原点に共感しMizkanに来たわけですから。
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