第一線のマーケター・クリエイターが明かす、キャリアアップの奥義。今回は、花王グループのエキップでD2C推進部長兼コーポレート戦略本部システム部長を務める鳥橋葉子さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q. 新卒ではコンサルタントとして働かれていたそうですね。
大学時代、経営コンサルティング会社の方が講師を務める授業を受けました。そこで、さまざまなフレームワークを使って論理的に解決策を導き出す姿に憧れ、就職先にコンサル業界を考えはじめました。他の業界より、何倍も速く成長できる気がしたのも惹かれた理由です。加えて「ITの時代が来る」という予感があり、ITコンサルとしてPwCに入社しました。最初の1年は研修を行い、フレームワークはもちろん、マーケティング、戦略立案、システム構築、プログラミングまで、幅広い分野の基礎を築けました。
Q. 基礎力がついたところで転職を考えたわけですね。
はい、いま振り返ると転職回数は多い方かと。でも常に自分が興味を持てるか、価値を還元できる場かを大切に、仕事と向き合ってきました。
入社から2年で初の転職をして、元上司が起業に携わったITベンチャーでWebメディアの立ち上げを手伝いました。UIデザインやプログラミング、Webマーケティングのスキルは深まりましたが、このままITの道を突き進むことに不安を覚え…。2002年にコンサル業界に戻り、マーケティングや事業創造に強いオーディーエスに入社。入浴剤のコンセプトづくりや、電報サービスの需要を伸ばすプロジェクトに参加しました。少人数のチームで、上司やお客さまにも対等な立場で意見が言えて、やりがいを感じていました。
ところが、師匠のような存在だった上司が退職。その方が今後の私の成長を考え、日本ロレアルを転職先に薦めてくれました。私も「そろそろ事業サイドの仕事に挑戦したい」との思いが芽生えていた時でした。
Q. 日本ロレアル入社の決め手は何でしたか?
コンサル時代に身につけたITとマーケティング、2つの軸を掛け合わせて活かせる点です。化粧品ブランドのデジタルマーケティングとCRM(顧客管理)の推進担当として、2004年に入社しました。
ロレアルで担当した化粧品ブランドには、百貨店を主要なチャネルとするラグジュアリー系と、ドラッグストアに並ぶようなマス系の2種類があり、マーケティングのありかたも異なります。例えば、ブランドイメージにおいては、ラグジュアリー系の「シュウ ウエムラ」はいかに憧れを持ってもらうか。一方、マス系の「メイベリン ニューヨーク」はいかにワクワクさせるかに、重きを置いて施策を考えていましたね。
その後、すべてのラグジュアリーブランドのCRMを包括的に推進するプロジェクトをリード。新たなCRMシステムの導入を含む、とても重たい案件でした。特にラグジュアリー系のブランドは、思想や各担当がやりたい施策も全く異なります。一方で私のミッションとしては、会社としての全体最適化も考える必要があります。ブランドマネージャーを説得し、少しずつ味方につけていきました。プロジェクトやチームのマネジメントに不可欠な「コミュニケーション力」が鍛えられたのは、間違いなくこの時です。
Q. エキップの前にもう1社経験しているんですね。
日本ロレアルでの14年で、マネジメントに自信が持てました。あと自分に足りないのは経営視点だと思い、subsclifeというスタートアップに、マーケティングと事業アライアンスの責任者として参加しました。入社した年は、サービスをローンチする直前で。社長の隣で、事業パートナー企業をどう説得するか、少ない予算でどうユーザーを集めるか、生きるか死ぬかのヒリヒリした日々を送りました。経営というものがよくわかりましたし、度胸がつきましたね。
現職のエキップには、同社に転職していた日本ロレアル時代の同僚から、「経営の直下で、デジタル領域を包括的に見ることのできる人を探している」と聞いて、今までの経験や経営視点を活かせるチャンスだと思い、転職を決めました。
エキップは、「RMK」「SUQQU」「athletia」という3つのブランドを扱う化粧品メーカーです。私は2020年に入社し、D2C推進部を設立。弊部メンバーによる成果として、パーセプション・フローモデルを導入し、各ブランドの課題を抽出しました。新発売のデオドラントミストのプロジェクトでは、「汗ではなくにおいを抑えて気持ちよく汗を流そう」というパーセプションチェンジをした結果、ヒットに導くことができました。また、データの民主化も進め、各ブランド担当者がCRMデータを簡単に閲覧できるようにしました。現在は、オンライン·オフラインを通した各ブランドの顧客体験向上の伴走役の役割を6名のチームで担っています。2022年からはシステム部長も兼務することになり、D2C推進部のノウハウを社内DXに応用しています。
転職回数が多い人を「ジョブホッパー」などと呼びますが、私は常に「ITとマーケティングによる変革を推進したい」という確固たる軸を持ってキャリアを重ねてきたつもりです。道は1本でつながっています。エキップは、その集大成を発揮する場所だと思っています。

株式会社エキップ
D2C推進部長兼
コーポレート戦略本部システム部長
鳥橋葉子 氏
大学卒業後、ITコンサルタント、ITエンジニア、マーケティングコンサルタントを経て、2004年に日本ロレアルに入社。化粧品ブランドのデジタルマーケティングとCRMを推進。2018年からsubsclifeでマーケティング部長兼事業アライアンス部長。2020年、花王グループの化粧品メーカー・エキップにD2C推進部長として入社。2022年よりシステム部長を兼務。これまでの知見を活かし社内のデジタル領域を統括。

株式会社マスメディアン
取締役
国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
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