商品・サービスの売上拡大を目的としたプロダクトマーケティングだけでなく、中長期的に、商品・サービスが選ばれ続ける理由をつくるうえでは、プロダクトの信頼を底上げしてくれる企業ブランドの存在も不可欠です。しかし、ステークホルダーにとって、目に見える商品・サービスをはじめとする事業自体が社会環境の変化に合わせて大きく変わる時代、手触り感をもった「企業ブランド」の確立は難しさも伴います。本特集では主に企業ブランドにスポットを当て、先進企業の取り組みをレポート。まず本記事においては、企業ブランド構築の具体的な手法について、ブランド・マネジメントを中心にマーケティングの研究を行う青山学院大学の久保田進彦教授が解説します。
企業ブランドのマネジメント課題最終的な目標は「関係の形成」
企業ブランドのマネジメントには大きく3つの課題があります。①存在感を高めること、②人格をつくること、③関係をつくることです。私はMBAや大学院の授業でも、これらを強調しています。
「存在感を高める」というのは、認知率を向上させるとともに、そのブランドを頻繁に意識してもらう(セイリエンスを高める)ことです。存在感の向上は、企業ブランドであっても個別ブランドであっても、基本中の基本です。
「人格をつくる」というのは、強く、好ましく、ユニークな企業イメージを形成することです。望ましいイメージの形成もブランド戦略の企業はさまざまな行動をする主体なので、意志を持った存在と認識され、「人格」を感じやすくなります。そこで企業ブランドの戦略では「それは誰なのか」「どのような人であるのか」といったイメージ形成が大切になります。
「関係をつくる」というのは、ブランド・リレーションシップ(ブランドとの関係性)を形成することです。ブランド・リレーションシップとは、消費者がブランドに対して感じる心理的な結びつきであり、いわば「ブランドとの絆」です。本稿では消費者が企業ブランドに対して形成する絆を「コーポレート・ブランド・リレーションシップ」ということにします。
存在感を高めることも、人格をつくることも大切ですが、最終的な目標となるのが関係の形成です。…