2017年のアドベリフィケーション推進協議会の立ち上げメンバーであり、国内においてグローバル基準のアドベリ活用を啓発してきた電通デジタル。MomentumやIntegral Ad Science(IAS)、DoubleVerifyなどの国内主要アドベリフィケーションベンダーと連携し、情報発信を行ってきた。日本の広告市場の約半数をインターネット広告が占める時代において、電通デジタルでは、どのようにして広告主に安心安全はもちろん、より効果の高い広告環境を提供しているのだろうか。富田氏、大山氏に話を聞いた。
新たな脅威に対処するスタンダードを提示したい
アドベリフィケーション推進協議会の立ち上げから参画し、業界に向けた情報発信やツールベンダーと連携したソリューション開発を行ってきた電通デジタル。現在、Momentumと共同開発した、違法性や悪質性の高いドメインの除外リスト「Agency Blocklist」を活用し、新たな脅威に対処するスタンダードを提示している【図1】。
図1 アドベリフィケーション指標のPDCA
富田氏は「日本国内でアドベリフィケーションが話題になり始めた2017年頃、意欲的に対応されてきた企業の皆さんは自社で用意したセーフリストを使用して対策を進めていました。しかしセーフリストのみの出稿だと、進化を続けるプラットフォームの恩恵を十分に得られず、広告の投資対効果が高まらないという課題も生まれています」と話す。
また大山氏によると昨今、プラットフォーマー側の広告配信の自動化が進んだことで、場合によってはBotによるインプレッションやクリックなど、アドフラウドが含まれた状態で誤った最適化が行われ、悪循環が生じる事例もみられているという。
この時に重要なのが、入口の段階でブロックリストを利用して悪質なドメインやWebサイトを排除することにある。現在、電通デジタルでは「Agency Blocklist」で安全性を担保した上で【図1-①】、IASやDoubleVerifyでの計測結果を広告運用での活用に最適化するダッシュボード「MIERO Digital powered by Clear Code」を提供【図1-④】。この計測結果を精査し、各クライアントに最適化されたPDCAサイクルを構築することに貢献している。さらに、ブロックリストでのドメイン単位の除外対応だけではなく、各アドベリフィケーションベンダーのソリューションを活用することで、リアルタイムでのURL単位のブロックも可能だ(【図1-③】)。
「各社ソリューションでは多くの数値を確認できますが、広告主から見ると、指標が多すぎて、何を見るべきか混乱してしまう場合もあります。そこで当社のダッシュボードでは、広告運用において重要な指標に絞り込み、配信面を判断する上で必要な観点を提示しています。また「Agency Blocklist」によって最低限のリスクは抑えられているものの、一度出稿をした上でブランドとしてブロックすべきドメインがないかを確認する必要もあります。その点でも広告を出稿されている企業自身が判断することが、重要だと考えています」(富田氏)。
広告から購買までをつなげ本来の広告効果を判断すべき
富田氏は「グローバル企業では防衛手段としてアドベリフィケーションツールを当たり前のように活用していますが、日本国内では広告会社やプラットフォーマーに対する一定の安心感や、従来の商習慣もアドベリフィケーション導入率の低さに影響しているのではないか」と現状について話す。広告主側では“守り”とも言えるブランドセーフティに投資することの費用対効果も問われ、またコストや人員の関係でそこまでやりきれないと課題感を持つ企業も多い。そうした中で同社はどのような解決策を提示していくのか。
「同領域ではIASやDoubleVerifyなどグローバル企業が中心となってソリューションを提供していますが、アドベリフィケーション推進協議会としてだけでなく、電通デジタルとしても各社と緊密に連携を図っています。さらにクライアント側の業種・業態も多岐にわたり、これらの知見が蓄積されてきています。また電通デジタルはCRMやデータクリーンルームに関する専門チームも有しているため、広告接触から購買までをつなげ、“顧客の質”も把握可能です」と富田氏。「例えばMFAサイトに関しては、クリック率が非常に高いケースもあり、数値としては“効果のある配信面”として評価されてしまいます。しかし、実際にMFAサイトから集客された顧客の最終的なCV率やLTVを見てみると、本来、期待する“広告効果”が高いとは言い難い。広告クリック前のユーザーの行動も含め、目先のCTRにとらわれない総合的な観点で“本当にその広告に効果はあるのか?”を判断すべき。そうした部分のサポートもワンストップで提供できるのも強みです」と続ける。
例えば従来のパネル調査と組み合わせてアドベリフィケーション指標をベンチマーク化して配信面を精査し、日々の広告運用のPDCAに組み込むといった提案も行っているという。
アテンションエコノミーに対応 新たなツール活用方法を提示したい
アドエクスペリエンスの質と広告の効果という側面、投資に対する効率という側面から考えると、適切なアドエクスペリエンスを設計する難しさはある。先述の通り、生成AIの普及で新たな脅威が生まれていることも含め、デジタル広告ビジネス市場の健全化に向けた対策は、次のフェーズを迎えていると富田氏は話す。
「広告会社としては、出稿時の与件整理の段階で、そうしたリスクを前提とした提案を行う必要があります。皆さんも今一度、出稿状況を確認してもらえたら」と富田氏。
大山氏は「ユーザーエクスペリエンスをより高めるためには、継続してPDCAを回していく必要があります。当社のソリューション開発も含め、さらにクライアントごとの提案の精度を高め、業界全体で指標やツールの活用方法も模索していけたら」と今後の展望を語った。
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アドベリフィケーション推進協議会(株式会社電通デジタル)