広告業界における生成AIの活用といえば、当初はバナー制作の自動化や広告メディア効果の可視化など業務効率の側面での活用法が多かった。一方で、活用が進むなかで、生成AIの活用提案にも各社の独自性が出るようになっている。マーケティングにおける「対話」というプロセスに着目し、独自のメソッドと生成AIを掛け合わせたソリューションである、「DDD-AI」を発表した大広の鷲北雄介氏と、大広WEDOの原田信宏氏に話を聞いた。
「ブランド人格」を体現したOne-to-Oneマーケティングを
―大広では自社のバリューを「真の『顧客価値』の創造」と設定し、それを生み出すためのケイパビリティとして「Deep Dialogue Design(深層対話)、以下DDD」を強みとして打ち出しています。この「DDD」のメソッドを活かしたAIソリューション、「DDD-AI」とはどのようなものでしょうか。
鷲北:「DDD-AI」は、OpenAI社のChatGPTなどの生成AIを活用して、企業のマーケティング支援を行うAIツール群を集約したプラットフォームです。大広は長年にわたり、ブランド戦略やコミュニケーションプラン、CRMなどを手掛けており、まさに深層対話(DDD)に強みを持っていると自負しています。その強みを活かし、顧客との対話を通じて顧客価値を見つける独自の体系的メソッドである「DDD」の考え方に基づき、AIの活用で顧客価値を効率的に見つけ出す支援をするソリューションが「DDD-AI」です。
企業が探求すべきマーケティングに資する真の顧客価値とは、顧客が求めること、企業が伝えたいこと、そして社会が求めることが重なる部分に見出されるものです。ただし、そこに至るには顧客の本音を深く掘り下げる必要がありますが、そうしたことを実現できる人的リソースには限りがあります。「DDD-AI」は真の顧客価値に迫る深層対話を、AIの力を活用し、より多くの企業で活用してもらうことを目指しているのです。
原田:大広WEDOでは顧客の声からインサイトを発掘するなど、生成AIを活用したソリューションの構想・開発・実装全般を担当しました。従来、AIは主に利便性や省力化に利用されてきましたが、最近はより上流のプロセスに活用する動きが広がっています。
―「DDD-AI」のソリューションのひとつである、「TribeAI」について教えてください。
原田:一言でいえば、顧客の声からインサイトを発掘するためのソリューションです。例えば、新製品が発売された際にSNS上のつぶやきを分析することがありますよね。従来、こうしたソーシャルリスニングと言われる活動では、顧客の声をキーワードのボリュームで捉え、マーケターが傾向などを分析してきました。しかし、それだけではトレンド的に多く投稿されているワードを潮流でとらえたり、大局で投稿内容のネガポジ判断をしたり、といった活用しかできていなかったのではないでしょうか。そこで「TribeAI」では、顧客の声を数値化(ベクトル化)し、自然言語処理を活用して投稿の背後にある“文脈”まで捉え、ブランドや商品に関連する意見や価値観の塊(トライブ)に分類。“人格”レベルにまでフォーカスして顧客の姿を明らかにしながら、ニーズをより深く理解できるようになることを目指して開発しました。
図1 「TribeAI」の活用イメージ
―「DDD-AI」のもうひとつのソリューションである「BrandDialogueAI」について教えてください。
原田:端的に言えば生成AIを活用したチャットボットサービスなのですが、その対話にブランドの“人格”を織り込み、そのブランドらしい対話を実現できる点に独自性があります。まずは、各企業が保有する顧客データや商品データなどをベースにしたダイナミックプロンプト技術を通じて、各顧客とOne to Oneの対話を実現します。従来のチャットボットは、キーワードのマッチングによる回答に依存するため、回答の選択肢が限られ、柔軟性が低く、対話が成立しないことも多いのが課題でした。「BrandDialogueAI」であれば、対話の中で、ブランド人格を体現すべく、ブランドの知識を学習させているので、その人格に基づいて、より自然な対話で最適な回答を返したり、顧客との深い対話を通じて、さまざまな意見や要望を引き出したりすることができます。
鷲北:直近ではD2Cのオーダースーツ会社であるFABRIC TOKYOさんと実証実験を行いました。過去にスーツを購入した顧客に対してLINE上で別の商品を提案する取り組みを実施したのですが、「BrandDialogueAI」はマーケティングの究極の理想とも言える真のOne-to-Oneマーケティングを実現するツールになり得ると改めて実感しました。
―今後の展開について教えてください。
原田:マーケティングにおける、あらゆる顧客接点、対話の場面に生成AIが浸透していくと考えています。これにより、企業のデータ活用も一歩進むと考えています。従来は顧客データを分析し、購買データの状況を把握しながら、次のアクションをデータに基づいて検討することしかできませんでした。つまり、顧客の状態は把握できるが、次の打ち手につなげにくいという状況です。「DDD-AI」のソリューションを活用することで、例えば、ロイヤルティの高い個客のインサイトを手軽に探ることができるようになります。本当の意味で、仮説や勘、経験値に頼らず、データに基づいた戦略を立てることが可能になるので、今後はプランニングや企画の精度を高めることに注力していきたいですね。
鷲北:大広は、真の顧客価値を探りあてるさまざまなノウハウを持っていますが、大切にしているのが「対話」です。これは「DDD-AI」のソリューションの開発にも共通するテーマです。これまでの分析方法に顧客との対話データを組み合わせることで、顧客の捉え方や顧客の理解が進み、マーケティングの手法は大きく変わるはずです。AI同士の対話からマーケティングのヒントを得るなどの取り組みも検討しながら、今後も新しいAIソリューションを開発していく予定です。これまで手が届かなかった分析領域に踏み込むことで、マーケティングの未来の可能性が広がると信じています。
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