第一線のマーケター・クリエイターが明かす、キャリアアップの奥義。今回は、日本特殊陶業でグローバル戦略本部コーポレートコミュニケーション室長を務める深尾奈美さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q. 新卒で食品メーカーに入社した理由は何ですか?
パンが大好きで、子どもの頃からパンに関するアイデアをいつもノートに書き留めていました。そして、高校生のとき「こんなパンが食べたい」というパンの企画書をつくり、食品メーカーに送ったんです。
すると、会社から「深尾さんのアイデアを商品化したい」と連絡が。そして名古屋の本社に行き、意見を述べる貴重な経験をさせてもらったのです。これが私のキャリアの原点となりました。
そのときの企画は実際に商品化されました。消費者から「おいしい」という感想をいただいていると会社の方に聞いて、すごく嬉しくて。
「食を通じて、たくさんの人を幸せにしたい」という気持ちが芽生えました。そして、大学卒業後は食品メーカーに入ろうと思い、学生時代からご縁をいただいていたこの会社への入社を決めました。
Q. ただ配属は商品企画でなく人事部門でした。
はい。入社前は商品企画か広報を希望していましたが、実際には、人事部門へ配属になりました。実は大学4年のとき、後輩の就活を支援する学生団体を立ち上げ、学生と会社や社会人をつなぐイベントを企画運営していました。それを社員の方が知り、「深尾さんは就活や学生のニーズに詳しいから、人事に向いている」と言われ、入社後は人事に配属された形です。
会社からそう言ってもらえるのは光栄なことだと、頭で理解はできても、本心では正直がっかりしました。実際に人事に従事してみると、非常にやりがいは感じましたが、商品企画の夢も捨てきれず。2年後、「私に商品企画の仕事をするチャンスをください」と会社に直談判しました。
Q. それで、念願の商品企画に異動したわけですね。
でも、パンへの思いが強すぎたのか、アイデアはなかなか採用されませんでした。理想とかけ離れた現実に苦しむなかで、夢にまで見た商品企画という仕事への情熱が段々としぼんでいくのがわかりました。
同時に、人事のときのやりがいを思い出すようになりました。採用活動で関わった学生に「深尾さんと出会って自分のキャリアを描けるようになった」と言われるほど、誰かの人生に影響を与えられる仕事だったなと。ただ、いまさら人事に戻りたいなんて、あまりに都合の良すぎる話で、言い出せるはずもありません。それで、自分なりの筋を通す意味でも、食品メーカーを退職し、改めて人事の世界で生きる決意をしました。
2007年に機器メーカーに入社し、採用や教育を担当しました。エンゲージメントの低い事業部での組織活性化を命ぜられ、当時まだ珍しかった事業部人事として組織の立て直しに取り掛かりました。
最初は「本社のスパイだ!」と、現場からすごい反発に遭いました(笑)。そこで、積極的なコミュニケーションで仲間を増やすことを最優先。徐々に自分を理解してくれる仲間も増え、事業部のビジョンやミッションをみんなでつくり上げるほど、一体感が醸成され活気のある組織に変わっていきました。
ところがある時、会社全体が統廃合されることになり、私自身もリストラ対象になりました。転職活動を始めましたが、当時は雇用環境も良くなかったこともあり、なかなか再就職先も見つからず、ついに人生で初めて無職になりました。
Q. 予期せぬリストラ、それでも再び人事の世界へ?
あるIT企業が、そんな私を受け入れてくれたんです。社長直轄で、当時300人だった会社を1000人規模にするのが私のミッションでもありました。人事だけでなく経営の視点を身に付けたくて、MBAを取得したのもこの時期です。
大学院で学ぶうち、日本の産業の停滞に危機感を持つように。中でも自動車産業は、EV化の中で100年に一度の変革期を迎えています。そこで私もチャレンジしたいと思い、2019年に日本特殊陶業へ転職しました。
採用責任者として入社し、まずは、学生向けの発信を強化しました。2年ほど取り組むうち、地元の東海圏以外での認知度の低さという課題に直面しました。採用広報だけでは認知度向上には限界がある、広報部門の強化が必要だと会社に伝えたところ、その1カ月後、広報部門への異動の辞令が出て、人生初の広報部門に異動しました。
異動後に着手したのは、学生層や若手社会人層向けのプロモーションです。デジタル広報の強化、サッカーワールドカップに合わせたテレビCMの出稿、NewsPicksの番組制作などを行いました。1年後には、企業認知度が35%から47%に伸長。その後、グローバル広報の強化にも取り組んでいます。
正直、40歳を過ぎて新しい職種に就くことには、不安や迷いがありました。そんな自分の背中を押したのは、無職になった経験です。市場価値がなければ必要とされないのは、自分も企業も同じ。世の中から求められて初めて存続できる。自分自身も企業も組織もその価値を磨いて発信し、皆さんに知ってもらえる努力を続けていきたいです。
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