バラエティ番組の出演がきっかけでブレイクし、「尾木ママ」の愛称で親しまれる教育評論家で法政大学名誉教授の尾木直樹さん。デジタル技術の進化により恩恵を受ける一方で、さまざまな脅威にも晒されている私たち。特に子どもへの影響が大きいと話す尾木さんが考えるネットリテラシーのあり方とは。それに対してメディアや広告が果たすべき役割についても語ってもらった。
教師嫌いだった自分が教師に 子どもたちの心の傷に寄り添う
尾木ママこと尾木直樹さんは、多数の情報・バラエティ・教養番組やCMへの出演や、SNSなどさまざまなメディアで活躍。また全国各地での講演活動にも精力的に取り組んでいる。
「子育てと教育は愛とロマン」「学校は安心と失敗と成長の砦」を信条に、教員時代からフリーとなった今日に至るまで、教育現場と社会の架け橋になりたいと奔走してきた尾木さん。しかし自身は学生時代、教師に対して良い印象がなかったという。「体罰を受けたり、中学・高校と先生に対して嫌悪感を抱くようなことばかりで、将来は教師にだけはなるまい、とすら思っていたんです」。
そんな尾木さんが一転、教師を目指したきっかけは、母親の勧めだった。高校を卒業し、入学したのは早稲田大学の教育学部。しかし大学4年生になり就職先に悩みつつ、最初はマスコミを志望していた尾木さんは、「直樹に一番向いているのは、学校の先生だよ」と母親から声をかけられた。
「母は、心が傷つくような体験をした中高時代の僕を見て、その経験があるから不登校ややんちゃな子たちの気持ちに寄り添える、良い先生になれると言うんです。それを聞いてもう、目から鱗でしたよ。…