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月刊『宣伝会議』創刊70周年記念座談会

ネット言論空間におけるSNSの課題と広告メディア環境に与える影響とは?

澤野未来氏(ファクトチェック・イニシアティブ)、長澤秀行氏(クオリティメディアコンソーシアム)

月刊『宣伝会議』は2024年4月に創刊70周年を迎えました。周年を記念し、いま広告・コミュニケーションビジネスを取り巻く課題を有識者、実務家の皆さんと議論する座談会を企画。3回目となる今回は、フェイクニュースやなりすまし広告問題などを引き起こしている「SNS」をテーマに、クオリティメディアコンソーシアム事務局長長澤秀行氏と、ファクトチェック・イニシアティブ理事の澤野未来氏が議論します。様々な立場で多様なメディアに関わってきた二人から、複雑に絡み合った問題点のありかと、その解決への道筋について話を聞きました。

(左)ファクトチェック・イニシアティブ 理事 澤野未来氏、(右)クオリティメディアコンソーシアム 事務局長 長澤秀行氏

プラットフォーム企業とメディア企業の対立が鮮明化

―最近のメディアとSNSの関係性の変化を、お二人はどのようにご覧になっていますか。

長澤:10年ほど前、SNSとニュースメディアは非常に親和性が高いと言われていました。日本国内でもBuzzFeedのようなオンライン専門のニュースメディアが現われ、記事を各種SNSプラットフォームにデリバリーして読者を獲得して成功を納めました。SNS上のシェアや「いいね」が増え、ページビュー増につながるということは、SNSプラットフォーマーにとっても、メディアにとっても望ましいことだったはず。ところが、記事の利用許諾料や利益分配の問題、表示アルゴリズムの不透明性などから、ついに欧米では昨年ぐらいから、SNSプラットフォーム側がニュースメディアを重視しない姿勢を打ち出し始めました。

直近ではカナダ政府が、2023年6月に大手プラットフォームに対して報道機関への対価を払うよう義務付ける「オンラインニュース法」を可決しました。米Meta社はこれに対抗し、2023年8月、同社がカナダ国内で運営するFacebookとInstagram上から、ニュース投稿の配信を停止。こうした意思決定の背景には、もはやSNSプラットフォームがニュースというコンテンツに頼らなくても、日々投稿されるUGCコンテンツなどのおかげでページビューが保てるようになり、広告収入を得られるようになったことがあるでしょう。

コンテンツメディアとプラットフォーマーの対立が鮮明化したのは、前述のような各国政府による法規制がきっかけではありますが、そもそも、プラットフォーム側は、ニュースメディアのコンテンツに頼らなくても広告収入が得られる状況になっているのです。

また、メディアからすればニュース投稿の配信停止以前に、SNSプラットフォーマーの投稿アルゴリズムが公開されていないことにも、不満がありました。どんな基準で配信を決めているのか。この判断基準が公開されていないことが、近年のSNSに横行するフェイクニュースの問題にもつながっています。

澤野:私は新聞社のソーシャルメディア担当として、10年近くSNSを活用してきました。そうした経歴から、長澤さんがお話しされたコンテンツメディアとSNSの関係性とはまた、違った形でのかかわりをもっていると思います。

日本で、SNSが新たなニュースプラットフォームとして“信頼に足る”と思われ始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけと言われています。速報性が切実に求められる中で、当事者が直接発信できるSNSの有効性がメディアにも認識されました。この転機がメディアにもたらした変化には良い面と、悪い面の両方があります。

記者もSNSを使うようになり、記者と読者が直接つながるという新しい関係性が生まれました。取材の糸口を見つけたり、読者の反応にすぐに対応できたりなど、危機管理も含めた双方向の関係性が育まれるようになりました。

一方で炎上という新たなリスクも生まれました。危うさを回避するため、記者に対するリテラシー教育の必要性も高まりました。

加えて、新聞社のようなメディア企業とSNSプラットフォームとの関係性に新たな動きが見られました。

まずは…

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