情報爆発時代。商品やサービス、そして広告のコモディティ化が加速し、従来の広告ではターゲットの心に届きづらくなっている。広告がノイズとして捉えられる現代に必要なのは、ターゲットとの共鳴醸成だ。「それに最適なのは、エモい体験を介した情緒的なコミュニケーションです」と、エイベックス・アライアンス&パートナーズの森下隼吾氏は語る。
n=1の深い熱狂や感動を生み出し大きなムーブメントへ
エイベックスのグループ会社であるエイベックス・アライアンス&パートナーズは、エンタメIPを活用して、企業の抱える課題を解決することを得意としている。
「クライアントの課題と、それに共鳴するエンタメを紐づけることで、伝わる・人を引きつけるコミュニケーション施策を提案しています」とビジネスプロデュースグループの森下隼吾氏は語る。
コンテンツが溢れる今、ただ人気のアーティストを起用すれば良いという時代ではなくなってきた。例えば、企業の伝えたいメッセージと同じバックグラウンドを持つアーティストを起用するなど、文脈までつくり込む必要がある。さらには、そこに至るまでのプロセスをいかに伝えるかが問われているという。
「単にIPを“消費”するやり方では、ファンの反感を買います。文脈づくりには、クライアントの持つブランドや課題とIP、その両方への深い理解が必要です。IPホルダーだからこそできる深度でのマッチングやコミュニケーションは私たちの強みです」と森下氏。
さらに「私たちは、だれかひとりのためを思ってつくるものが大きなムーブメントを引き起こすと知っています。n=1の深い熱狂や感動を、いかに生み出すか。定量調査より定性的なインサイト発掘をベースとした企画提案をするように心掛けています」と続ける。
企画開発力、IPの深い理解力、エンタメ特化型PR力を掛け算
エイベックス・グループでは、これまで音楽やマネジメント、ライヴをはじめとした数々のエンタメIP事業を展開し、それぞれヒットに向けて注力してきた。エイベックス・アライアンス&パートナーズでは2018年に、グループ内の営業部門を統合し、コンテンツセールスとソリューションセールスの2本柱の営業体制に。さらに、経験豊富なプランナーやディレクターも加わった。
「数々のクリエイティブを制作して養われた企画開発力、コンテンツIPホルダーの知見を活かした上で、最適なコラボを実現するコーディネート力、IP事業で培われたメディアリレーション力、これらが掛け合わさって、より高度なソリューション提供体制が整っています」と與儀氏。2024年4月からはスクール事業(ダンス講師の派遣/カリキュラムのライセンス)が移管され、高校生のダンス大会など、IP・企画・メディアリレーションといった事業拡大にも取り組んでいる。
現在、同社が取り扱うIPは、トータル700以上。アーティスト、モデル、俳優のみならず、音楽系をはじめとする各ライヴイベントや、アニメ作品やドラマ映画作品などの映像コンテンツなど、扱うIPは多岐に渡っており、クライアント課題に合わせたIPコラボを心掛けている。
「予算感や課題に合わせてどんな施策が可能かなどもカスタマイズできるため、提案だけでなく、実現力も持ち合わせています」と森下氏は話す。また、それらを計画的に話題化するノウハウも強みだ。「重要なのは、avexは毎月、作品をリリースし、編成がある中で、メディアとのリレーションを構築し、それを企業に転換し設計しているということ。細部への丁寧な対応の積み重ねが露出量の差を生んでいます」(與儀氏)。
同社には、新規顧客獲得や若年層への新たなタッチポイントの創出という課題を持った企業からの相談が多く寄せられている。短期的な費用対効果ではなく投資対効果やCSRなど、長期的な認知度の向上や顧客醸成を期待したものも多いそうだ。
「近年は、マーケティング施策のみならず、社内広報などインナーコミュニケーションの支援も増えている。記念イベントの企画運営や従業員のロイヤルティ向上施策といった事例も創出できています」と森下氏。すでに取引社数は150社を超えて、取引件数伸長率も280%(2020年→2023年)で推移している。
ファンが熱狂し自発的に拡散する「REEDM」モデルを提唱
IPの生み出す力は国境や文化を越え、ますます大きく広がっている。
「ファンの方に喜んでもらうことで、自発的に拡散して周りの人を連れてきてくれて、その人もファンになってくれて…と雪だるま式でファンが増えることで、ヒットが生まれています」と森下氏。同部門では、新たな消費行動モデル「REEDM(リズム)」を提唱する【図1】。
自分と関連性がある事柄が興味を惹き、その先のコンテンツで共感が醸成され、ブランドへの信頼、体験へとつながる。そして、顧客が使命感を持つプロモーターとなり発信することで、さらなる顧客を生み、好意の輪が拡張していく形だ。
単なる一過性の広告ではなく、熱狂につながる施策を組み立てられるのがエンタメコンテンツならではの価値。「今後は、グローバルに向けた施策やエンタメコンテンツをR&Dやブランド事業などの広告以外での共創可能性も追求していきたい」と森下氏。
6月からは宣伝会議と共に、エンタメを軸とした企画開発ソリューションを提供予定だ。
【図1】循環型コミュニケーションモデル「REEDM(リズム)」の概念
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