ビジネスパーソンであれば、誰しもプロジェクトマネジメントを担う機会があるのではないだろうか。そもそもプロジェクトマネジメント力とは。日頃の業務の中で、どのようにプロジェクトマネジメント力を身に付けていけばよいのか。ゴールドウインの冨田良介氏が自身の実体験をもとに、マーケティング×デジタル×プロジェクトマネジメントを兼ね備えるために取り組むべき仕事や持つべき意識などについて解説する。
スキルセットが急激に伸びた総合広告代理店時代
私が在籍した代理店では、クライアントの新製品発売に応じて、マーケティングコミュニケーションの戦略立案およびクリエイティブの開発、ウェブ制作・システム開発のディレクションを行っていました。(特にクリエイティブはカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでの受賞歴もあり、強みにしていました)。私はデジタルチームでプロジェクトマネージャー(PM)をしていましたが、特に良い経験だったのは、社内外の優秀なスタッフとともに、最新技術を駆使した案件に関われたことです。デジタルの提案では、いかにユーザーを楽しませ、バズらせるかという点が重要でした。
マーケティング戦略をベースに、クリエイティブのアイデアをデジタルの最新技術でどう実現するか。簡単に方策が決まることはレアで、ギリギリまで詰めます。CM放送日は決定しているので、リリース期限は絶対に厳守。胃痛にも慣れた日々を送りながら、具体的なアイデアを連発する強力なチームメンバーと進める仕事は、ついていく難しさはありつつも収穫の多い時間でした。
この繰り返しが、私にとってデジタル全般における高品質な経験になり、ユーザーの暮らしに商品を浸透させるマーケティングの面で学びになりました。そして何より、人を動かすことの難しさと、集まった力の強さを知れました。
代理店での日常は、クライアントの高い要求や社内の論戦、成果物品質の徹底やタイトなスケジュールなど、苦しむ場面は日々ありましたが、マーケティング、デジタル、プロジェクトマネジメントのいずれも自分が高まっていることが実感できる有益な時間だったと、今でも思い返します。
一方で、アパレルメーカーや消費財メーカーという事業会社では、役割はガラリと変わります。どの事業でどのような取り組みをするのか、を考えて提示する役割が主となります。WhatとHowの関係でいうと事業会社がWhat(何を)、ベンダーがHow(どのように)を担うイメージ。事業の上流で全体の設計図を描く形ですが、マーケティング、デジタル、プロジェクトマネジメントのスキルを急速に磨きたいなら、新規事業開発に挑戦するのがおすすめです。
新規事業開発は、準備段階では人も予算も充てられないので、ビジネスモデル立案から仕組み化、市場分析、マーケティング戦略、サービス・システム設計、収益計画など、新規事業に必要なタスクはすべて自分と選抜メンバーだけで対応します。このとき、マーケティングではフレームワークを使いますし、デジタルでは基本的な技術から新しい試みまで検討します。プロジェクトマネジメントでは、大型プロジェクトを丸ごとマネジメントするので、腕が磨かれないはずがありません。…