いわゆる「マーケティング・フレーム」の中には、本来は万能でないにもかかわらず、原理原則的なものと扱われ、頻繁に使われるがうまくいかないケースが多くある。そのフレームを使うべきか否か、案件に応じて判断することは当然必要なことだが、どういうときに使うべきでないのかという議論はほとんど行われていない。本稿では電通 統合プランニング・ディレクターの北村陽一郎氏が著書『なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか』の内容をもとに、マーケティング・フレームをうまく使いこなす術を解説する。
「パーチェスファネル」ご使用上の注意
「マーケティング・フレーム」とは、要するに「ヒトがモノを買うときの行動をモデル化する」ということをしているわけですが、そもそもヒトもモノもそれぞれが多様なので、その掛け算である「ヒトがモノを買うときの行動」は必然的に、極めて多様にならざるを得ません。なるべくシンプルにしたいのはやまやまですが、元がこれだけ多様なので、できるだけ頑張ってはみました、というようなものにしかなり得ないのではないかと考えています。
まずは「パーチェスファネル」について、考えてみましょう。購買行動には「ブランド計画購買」「カテゴリー計画購買」「非計画購買」があります。非計画購買が多いカテゴリーでは店頭で初めて存在を知りそのまま買ってしまうので、そもそもパーチェスファネルが向きません。
例えば、ターゲットを20~40代男女の約4000万人とし、認知施策のテレビCMで広告認知率50%を取り、Web動画を200万人に見せて関心を取り、80万人にSNSを当てて検討してもらい、バナー・リスティングの刈り取り施策で40万人にコンバージョンさせるファネルを見ると、テレビCMを見た2000万人のうちの200万人がWeb動画を見るのだな、と思います。…