キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、エムスリーでCDO(最高デザイン責任者)を務める古結隆介さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q.大学生のころは映画業界を目指していたのですか?
はい。もともと映画監督になりたくて、大学では映像制作を学び、アルバイトで制作の現場も経験しました。しかし、そこで監督をしている人たちは、僕の親世代・祖父母の世代の人が多かった。確かにモノづくりには経験の積み重ねが大切ですが、何十年も待てないなぁ、と熱が冷めました。
大学ではモーショングラフィックスをつくっていて、Webでポートフォリオを公開していました。そんななかでWebデザイナーという仕事を知り、ラジオ局傘下のデザイン制作会社に就職しました。
ところが入社すると、先輩デザイナーはほとんどがグラフィック出身。Webデザインは独学する必要がありました。デザインの基本を教えてもらいながら、コーディングやFlashは本や雑誌で勉強して、手を動かしながら覚えましたね。
Q.入社3年後に最初の転職をされています。
映像配信サービスのGyaO(現在は解散)に自分を売り込んだら、とんとん拍子に入社が決まりました。同社では、ポータルサイトのUIデザインや、ランディングページの制作を担当しました。
そして転機はまた3年後に訪れました。2009年に事業がヤフーのグループに入ることになりましたが、僕は行かないという選択をしました。
そのときの僕は29歳。Webデザインはもちろん、グラフィックも映像も、なんでもやってきました。そんな経験から、自分は技術を突き詰める職人タイプではないという自覚がありました。その上でどう生き残り価値を生み出していけるかを考えて、「頭で考えられるデザイナーになろう」と思ったんです。これまでと同じことをやり続けてはダメだと思ったんですね。
Q.新しい環境にエムスリーを選んだ理由は?
当時はブラウザゲームの全盛期で、エンタメ業界のWebデザイナーの求人はたくさんありました。しかし、自分を変えるには、業界もがらりと変えた方がいいと考え、医療関連のWebサービスを提供するエムスリーを選びました。
エムスリーのデザイン組織は、情報設計をする人たちの集団でもありました。それで、入社してすぐに僕に求められたのは、会員の医師向けに配信していたメルマガの開封率を上げることでした。「え、ちょっと意味がわからない…」というのが、最初の正直な感想です。デザイナーとしてだけではなくプロジェクトリーダーとして参加し、マーケティング領域に携わるのは初めて。数字との向き合い方なんて全然知らないのに、来る日も来る日も数字とにらめっこ。試練でしたね。逃げ出してしまいたいと思うことも珍しくありませんでした。
でも、続けるうちに開封率を上げる施策がわかってきて、少しずつ成果が出始めました。また、なんでもやる姿勢が評価されて、新しい事業やサービスを立ち上げるときにアサインされる機会が増えていきました。最初はデザイナーがプロダクトづくりにここまで深く関われるとは思っていませんでした。しかし、この経験のおかげで自分がビジネスに貢献しているという感覚を、初めて持てたような気がします。
Q.一度エムスリーを辞めたのはなぜですか?
エムスリーでの仕事を通じて、ビジネスに深く貢献できるデザイナーという在り方はすごく価値があると感じていました。それができるデザイナーは世の中に多くないのではないか。そういう人が育つ環境をつくっていきたいという気持ちが強くなっていったのです。そんなときに、「それうちでやれますよ?」と声をかけてくれたビズリーチに入社し、デザイナーの採用や教育、研修を担う組織の立ち上げに挑戦しました。
エムスリーに戻ったのは2年半後の2020年。退職したとはいえエムスリーは好きだったので、声をかけてもらえて嬉しかったですね。
当時のミッションは、デザインチームの拡大。それにはデザイナーにとって魅力的な会社になり、採用力を強化する必要がありました。まず取り組んだのが、コーポレートサイトのリニューアルをはじめとした企業ブランディングでした。その一環で、「私たちは経営にデザインを取り入れる」という社会に向けた宣言としてCDOというポジションを新設しました。初代にはエンジニア出身の役員が就任し、2代目は経営とデザインの接続を強固にするために、デザイナー出身の僕が務めています。
とはいえ、僕の仕事の軸は変わらず「つくる」ことです。エムスリーを離れている間、マネジメントに専念してみて改めて思ったのは、デザイナーは自分で見て、触れて、体験して、つくることが好きでなくてはならないということ。
どの分野でも、どの時代でも、楽しんで追求している人が一番強い。次世代のクリエイターに言葉をかけるとしたら、「つくることを楽しんで」。これに尽きます。
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