2019年の持ち株会社体制への移行に伴い、傘下の企業はマーケティングや広告クリエイティブなどに特化する事業体を形成してきたADKホールディングス。昨今は、主にデジタル領域の専門会社と提携を結び、データドリブンマーケティングの土台を強化しようとしている。Cookie規制などでデータビジネスが変革期を迎える中での同社の方針とは。長年デジタル領域に携わってきた大山俊哉社長に話を聞いた。
企業ごとに最適化したソリューション提供が必要
―広告メディアビジネスの2023年を振り返っての考察をお聞かせください。
大きな潮流としては、広告会社における大黒柱であるテレビメディアの環境の変化が明らかになった年だと考えています。物価高、材料費やエネルギーのコスト高といった外的要因もありますが、ややもするとメディアとしての価値が揺らいでいる兆しもあったように感じます。
業種ごとの出稿状況で個別の変動もあり、これまでは復調する見通しもありました。しかし将来的な人口減少などを鑑みると、新聞・雑誌などの紙媒体同様、時代の移り変わりによって変化していく時期であるのではないか、と考えます。
またインターネット広告費も、少なくとも今年はこれまでの二桁成長と同じようにはいかないと感じています。要因のひとつは、プラットフォームの入れ替わるスピードが非常に速くなっていること。栄枯盛衰の激しい環境を前に、広告主もどう対応すべきか苦戦しているのではないでしょうか。
データ利活用という観点では、Cookieの利用制限が大きな変化のタイミングになっています。広告主企業が1stPartyデータを活用できる環境が整ってきましたが、企業内にデータを蓄積していく流れは今後も続くと思います。
私自身、業界が立ち上がる初期からデータマーケティングに関わってきましたが、かつては何かひとつのツールやシステムがあればすべて解決できる、という幻想のようなものがあったと思います。しかし結局、データといえども、そこまで万能ではないことに多くのマーケターが気づき始めている。当然ながら、個々のクライアントごとに取得すべきデータや分析方法は違って、それを一生懸命突き詰めていくしかないと言えるでしょう。
加えて、データだけでは実現しえないのが広告ビジネスが蓄積してきた人の心を動かすクリエイティブです。クリエイティブの良し悪しや、効果の有無というものも、もちろん人によって違う。10年程前はデータさえあれば万能という展望がありましたが、振り出しに戻った実感があります。
マス広告に加えデジタル、コンサル領域にも注力
―そうした状況の中で、どのような領域に注力したいと考えますか。
前述の通り、クライアントごとに最適化したソリューション提供が...