「創業100周年」と「社長交代」という節目に合わせ、リブランディングに踏み切った飛驒産業の岡田明子氏。歴史ある企業に変革を起こすにあたり、同氏が行った施策とは。リブランディングを軌道に乗せる具体的な手法について話を聞いた。

飛驒産業
代表取締役社長
岡田明子氏
飛驒産業の「真の価値」を届ける 100年続く企業のリブランディング
飛驒産業は2020年に創業100周年を迎えた老舗企業だ。100周年のタイミングに合わせ、先代から社長を継承した岡田明子氏は大規模なリブランディングを実施。社長就任以前の同社の歩みについて、岡田氏は、「先代が社長に就任した2000年当時、経営は厳しい状態にありました。そこで、これまで無価値とされていた『節』を主役にした家具や、家具には不向きと言われていた杉材を活用するなど、革新的な試みでV字回復を遂げました」と話す。
しかし、業績も回復した後のある日、同社を訪れた中川政七商店の中川政七会長が次のようなひと言を発したのだという。
「飛驒産業さんは、こんなにも素晴らしい取り組みをしているのに、世の中に伝わりきっていないのがもったいない」。
この状況から脱するには「企業ブランディング」が必要だというアドバイスを受け、岡田氏はリブランディングに踏み切ったという。
「当時は、父から事業継承するタイミングでした。そこで、次の100年を担うために何をすべきかを考えた結果、自分のためにも会社のためにも、会社の価値をしっかりと言語化して世の中に伝えることが重要だと考えました」と岡田氏。ここから同社の100周年事業に向けたリブランディングが始まった。
社外よりも、まずは社内への浸透を 日々の現場で次第に根付く理念
中川政七氏のブランディングメソッドの要諦は、「伝えたいことを整理して、正しく伝える」ことだった。この考えを軸に、岡田氏は企業理念(ビジョン)やミッションとなる4つの価値観を明文化、さらにコーポレートロゴの刷新も行った。
「ここで定めた企業理念が、『匠の心と技をもって飛騨を木工の聖地とする。』という“志”。それを実現するための4つの価値観(ミッション)が『人を想う』『時を継ぐ』『技を磨く』『森と歩む』になります。それらをまとめて、飛驒産業の“目指すべきところ”として整えました」。
これらの最終的な目標は、飛驒産業の価値を広く世の中に発信していくことだが、リブランディングにあたり岡田氏は...