創刊以来146年、九州を中心に事業を展開する西日本新聞社では現在、同社が持つ多彩な資産を活用した新規事業開拓を推進している。新規事業の開発が企業全体に与える影響や今後の構想について、ビジネス開発部の清田慎弥氏に聞いた。
新聞以外の収益モデル確立に向け 新規事業の開発部隊を発足
九州エリアを中心に1877年より「西日本新聞」を刊行してきた西日本新聞社は、新聞業以外の収益モデルを生み出すべく2017年に、不動産の管理や不動産投資を行う「不動産部」と新規事業を開発する「ビジネス開発部」の2つの部からなる「ビジネス開発局」を発足した。同社では、「2023中期経営計画(21~23年度)」において、3つの方針として「①メディア事業のモデルチェンジ」「②メディア外事業の拡充」「③経営基盤の強化」を掲げており、ビジネス開発局も、この方針に沿っての発足となる。
ビジネス開発部では、他社事業をグループ内に吸収する「M&A型」、自社で一から新規事業を立ち上げる「社内新規事業型」、他社への出資などにより共創する「出資・提携事業型」という3つの方法で新規事業を開拓している【図】。
同部に所属する清田慎弥氏は、「ビジネス開発部は、新たな収益の柱となる事業をつくり出し、グループの中期経営計画の達成に寄与することがミッションの部門です。私たちが新規事業の芽を見つけ、収益化するための道筋を描いたのちは、事業としてスケールさせていくために最適な部署へ引き継ぐ方法を現在はとっています。スムーズな事業移管、事業成長を実現するために、新規事業を立ち上げる段階からグループ内の各社・各部と連携しながら活動を行っています」と話す。
新規事業に携わる部署は、社内で「何をしているのか分からない」と孤立するケースも少なくない。そうなってしまうと、実は有効活用できるアセットがあっても、機能しないことも出てくるだろう。そのようなことを防ぐためにも、部署外のメンバーの協力は必須となる。
2021年に実施した、スタートアップ企業などから協業アイデアを募るオープンプロジェクト「X-kakeru(かける)」では、各部署からも担当者を出してもらい、選考プロセスや提案のブラッシュアップを通して「新しいビジネスの芽」を発見し、育てる意識づくりを行っているという。
自社アセットを活かす視点と周囲を巻き込む熱量が重要
このような新規事業の立ち上げに必要なスキルについて清田氏は、「他社との共創を行う中で、熱量を持ってプロジェクトに向き合えることは...