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根来龍之教授と読み解く、KINTOとTVerビジネスの共通点とこれからの共創

TVer

放送と自動車という異なる業界で、これまでの資源を生かしつつ、新たなビジネスモデルの構築を目指してきたTVerとKINTO。業種は違えども「既存の産業を変革するためのチャレンジ」をミッションとする2社には、業界の垣根を越えて共振する想いがあった。企業のIT戦略、イノベーションの専門家である根来龍之教授と、2社の担当者の鼎談を通じて、デジタル時代の新たなビジネス戦略、さらにマーケティング戦略における2社の共創事例をレポートする(本文中・敬称略)。

[写真左]
伊藤有弥氏
TVer 広告事業本部 第2営業部 兼 サービス事業本部 コンテンツタスク。渉外担当として、コンテンツ企画立案や広告枠提案業務など広告セールスに従事。TVer初の一社提供オリジナル番組『褒めゴロ試合』を担当。

[写真中央]
根来龍之氏
名古屋商科大学教授。大学院大学至善館特命教授。早稲田大学名誉教授(元 同大学ビジネススクール教授)。『集中講義:デジタル戦略』などの著書がある。

[写真右]
小川彩子氏
KINTO マーケティング企画部 広告宣伝チーム。主に認知や興味関心領域における戦略立案から広告運用などに従事。TVer 初の一社提供オリジナル番組『褒めゴロ試合』を担当。

「モビリティカンパニー」を目指す、トヨタの構想を形にするKINTO

──TVerとKINTOの取り組み概要からお聞かせください。

小川:KINTO(キント)は、2019年に始まったトヨタが展開するモビリティサービスブランドです。自動車保険などの諸経費を含めた月額利用料だけで、新車や中古車に乗ることができるサブスクリプションサービスを中心に展開。このKINTOのなかで、私はサブスクサービスのマーケティングを担当していて、認知や興味関心領域におけるお客さまとのコミュニケーション戦略や広告運用などを担っています。

根来:「車を所有しないでよい」「初期費用がなくても車のある生活を楽しめる」といったことが、KINTOの大きな訴求点ですよね。さらに、これらの特徴は重要ですがKINTOの事業を見る際、トヨタ自動車としての経営戦略のなかにおける役割を見ていく必要もあると思っています。

トヨタ自動車が掲げる「モビリティカンパニーになる」というビジネス構想を実現するため、KINTOという事業が重要な役割を果たしているからです。KINTOのサービス内容の拡張の先には、モビリティカンパニーとしての構想が見えてきます。

──TVerも放送局が提供しうる価値を再定義するような事業ですよね。

伊藤:私たちTVer(ティーバー)は従来、競合社である各放送局が腹を括って協力して開始した見逃し無料配信動画で、いわゆるAVODのビジネスです。ユーザー数も右肩上がりで、2023年1月には月間ユーザー数2700万MUB超えを記録しました。

ブランドセーフティが保たれた環境下で、デジタル広告として精度の高いターゲティングも可能な点から、多種多様な広告主の方々に出稿いただくケースが増えています。そのTVerにて、私は広告のセールスを担当しています。今日ご一緒させていただいているKINTOさんは、TVer社が広告セールスをスタートしてから最も活用いただいている企業様なのですが、根来先生のお話を伺いながら、KINTOさんとは広告主とメディアという関係性を超えて、事業に期待される役割に共通点が多くあることも改めて見えてきました。

狙った順番通りに広告を配信 TVerだからこその広告活用

──KINTOはTVerを積極的に広告展開に活用しているそうですね。その狙いを教えてください。

小川:KINTOという名前自体は、テレビCMのおかげもあって、少しずつ認知されてきました。ただやはり、当社のサービスは、これから世の中へ浸透を図っていく途上のサービスであるため、サービス名を認知した先の理解醸成のコミュニケーションの必要性を感じていました。そこでTVerさんに注目したのは「長尺動画配信が可能」「完視聴率が高く視聴態度が良い」という2点でした。

スキップされずに完視聴していただけるということは、それだけサービスを理解してくれる人を増やせるのでは?といったきっかけで出稿を始めました。さらに、「広告を見ていただく順番が大切ではないか」とも考えました。TVerさんの広告だとターゲティングができるので、お客さまの理解のフェーズに合わせて、私たちが企画した順番通りの広告出稿が可能になりました。

伊藤:まず60秒のCMを一度見てくれた方に対して、次に30秒のCMが必ず流れるシナリオ配信を組んでいるので、KINTOさんの狙い通りの順番で広告体験をしてもらえます。60秒もの長尺のCMとなると完視聴してもらうのは難しい。でもTVerは広告をスキップできないつくりになっていることもあり、広告の完視聴率は9割以上。それも「ながら見」というより、目的を持って能動的にコンテンツに接しているユーザーが多いので、広告と接触したときの反応も良いと感じていて実際にリサーチを入れてもその手のデータがアウトプットされます。

小川:広告のコンテンツの完視聴率の高さの背景には、TVerにはキー局の魅力的なコンテンツが豊富にそろっていることがあると思います。そして「コンテンツの安心感」も、私たちがTVerを出稿先に選んだ理由のひとつです。

根来:地上波テレビとTVerさんなどの動画配信サービスでは、視聴態度が異なるため、同じ放送局のコンテンツを活用しているとは言え、両社の広告枠の性質も違うものになるはずです。KINTOの場合には、サービス名の認知獲得を目的とするテレビCM出稿の段階が終わり、今はサービス理解を深めることを目的にしている。ここにTVerさんの広告を活用するというのは、非常に適切な戦略だと思います。

──KINTOはTVer初となる一社提供オリジナル番組『褒めゴロ試合』も提供したそうですね。

小川:『褒めゴロ試合』は、あるテーマに対してゲストが褒め合い、「褒め」の上手さを競うトークバトル番組です。1年半ほど、TVerに広告を出稿して手応えを感じつつも、さらにジャンプアップできる企画を探していたときに、伊藤さんから1社提供番組の提案をいただきました。

番組内でしか見ることができない特別なCMや提供表示の仕方など、細部までこだわっていただいたおかげで、KINTOのサービスに対する理解が深まることはもちろん、当社の遊び心やチャレンジ精神といったブランドキャラクターも表現できたと感じています。

──初の1社提供番組の実現の背後に2つのブランドの姿勢に共鳴しあうところがあったことも大きく作用していそうです。

伊藤:今回、根来先生と小川さんとお話をして、既存事業や既存取引先のブランド力や信頼性が基盤になっているバックボーンをはじめ、新しいチャンスに挑戦する社風など、KINTOさんとTVer社には共通点も多くて非常に近しいなと僭越ながら感じました。

根来:垣根の中で考えると、なかなか新しいアイデアは出てこないもの。だからこそ、「業界が違うけれど、実は同じ性質を持っている」とか、「ある業界で行われていることが自分の業界でも使えるんじゃないか」といったように考えることは、新鮮な着眼を得るという意味でとても重要だと思います。その意味で、2社は刺激を与えあえる部分が多いのではないでしょうか。

TVer 初の1社提供番組「褒めゴロ試合」。

TVerオリジナル番組『褒めゴロ試合』の視聴はこちらから

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