井の中の蛙、大海を知らず 海の向こうにある新たな収益源
2011年から2015年までシンガポールに駐在し、主にASEAN諸国を対象としたプログラマティック・プラットフォームの導入提案の仕事※1をしていた。当時、ASEAN諸国のプログラマティック広告取引はまだ黎明期だった。
また、グローバルに展開する巨大オンライン媒体社や自国のオンライン専門の媒体社が各国のオンライン広告市場を独占しており、テレビ局や新聞社などの既存優良媒体社はオンライン部門の収益化に苦戦していた。
そこで我々が狙いを定めたのは他社のプログラマティック・プラットフォームではまだ取引ができない既存優良媒体社。プレミアムなオンライン広告枠をプログラマティック取引できるようにすることで、プログラマティック広告市場がさらに活性化するばかりか、既存媒体社の収益増にも貢献するという見立てだ。
しかし、交渉は一筋縄ではいかなかった。媒体社が口を揃えて懸念していたのは、各国における既存バイヤーのカニバリである。つまり、プログラマティック取引を導入したところで、広告枠を買ってくれるマーケットのパイが変わらないのであれば、売上が拡大しないばかりか、手間ばかり増えて混乱を生むだけ⋯⋯という訳だ。
辛抱強く交渉を続けているうちに、どうせ売れていない枠だからテストだけならしてみようという媒体社が1社、また1社と増えてきた。実際にテストを開始してみると、当初の懸念はどこへやら。プログラマティック・プラットフォーム経由で枠を買い求めてくるのは、80%以上が自国外のバイヤーであった。
今まで自分たちが...