生活動線の中のいたるところに存在する多様なOOHメディア。大小さまざまな形を持つOOHのクリエイティブにおいて、意識すべきこととは。「Metro Ad Creative Award」の審査員も務めたPolarnoの相楽賢太郎氏に聞く。
大声で叫び、小さく語り掛ける それぞれのOOHが持つ声色
広告で表現することが“発言の内容”だとすると、媒体とは“声色”のようなものだと思います。そして大きく、堂々とした声色で伝えたいメッセージにはOOHという媒体(それもなるべくでっかいやつ)が適していると考えています。Webの広告などは効率は良いと思いますが、その企業やブランドが宣言や表明をしている印象はつくれない。その態度を示すことができることこそOOHの価値なのかなと思っています。
一方でOOHも多様な種類があるので、宣言や表明以外の声色で伝えたいメッセージに適した広告媒体もあります。ぼそっとひとりに対して語りかける声色で伝えたい場合には、電車広告などサイズがやや小さいものは適しているように思います。
このように、私がOOH広告をつくるときは、なるべくその“サイズ感”にあわせて表現を変えるようにしています。この媒体ならこの声の大きさなのかな、この声のトーンなのかな、だとしたらこの表現なのかな、と。
例えば、私が手掛けた事例でいうと、ソフトバンクのお仕事では「Music Project キャンペーン」(画像①)や「5G」の際は大きな声で、堂々と。世の中に轟くようなメッセージを意識しましたし、逆に同じソフトバンクの仕事でも、電車内の広告のみだった「ギガモンスター」や「ギガマナー」(画像②、③)の場合はぼそっとひとりに語りかけるようなトーンで制作をしていました。

画像①
SoftBank music project「しばられるな」篇(ソフトバンク)


画像②③
「ギガモンスター」「ギガマナー」(ソフトバンク)
昔は「グラフィック広告は0.5秒しか見られない」と言われていましたが最近では二極化して0.1秒か10秒か、という世界になりつつあります。情報処理のスピード感になれた人たちは、自分が興味を持てない、自分には関係がないと思ったものは、即座に流していく一方、面白さを感じたものは立ち止まって写真を撮る。さらに、その写真がSNSで拡散していくので、いかに足を止めてもらえるかがOOHの効果を...