デジタルの世界で知名度を確立させたブランドがさらなる顧客との接点拡大を目指したり、従来は人的営業中心だった企業が、テレビCMの活用に踏み切る機会があります。なぜテレビCMを選んだのか。初めて出稿する際に、どのような戦略を持って臨んだのか。担当者に話を聞きます。
広告宣伝はしない方針だった企業 エンドロール風CMで伝えた想い
無床診療所向けの電子カルテシステムや薬局向け業務支援システム、介護/福祉事業所向けの業務支援システムの開発及び販売・サポートなどを行うEMシステムズ。「国民の健康レベル向上に貢献する」企業を目指し、医療・介護従事者の業務をITやデジタルソリューションで支援している。
そんな同社は2022年11月、テレビCM「エンドロール」篇の放映を実施した。創業以来、初の試みだ。CMは、俳優の林遣都が演じる骨折が完治した主人公が、恋人と感動の再会を果たすシーンから始まる。その後、まるで映画のエンディングのようなエンドロールが流れ始める。
エンドロールには、骨折時の診察や検査、リハビリなど、主人公が元気になるまでの道のりを支えてくれた医療従事者たちのシーンや彼らの役職・氏名のクレジットが流れる。全員の氏名が流れた後、主人公は「でも、僕を支えてくれたこの人たちは誰が支えているんだろう?」という言葉を発する。そして、最後に「デジタルで日本の医療・介護の現場を支えるEMシステムズ」というクレジットが登場するという内容だ。
初めてのテレビCMにして凝ったクリエイティブになっているが、これまでのEMシステムズは大々的に広告を行わないのがポリシー。医療・介護に関する学会や展示会でブースを設け、小さく細くプロモーションを実施するという方針だった。
代表取締役社長執行役員の國光宏昌氏によると、EMシステムズはBtoBかつ医療・介護業界に特化したビジネス展開であるため、多くの生活者の目に触れる広告コミュニケーションよりも、ダイレクトに業績に結びつく医療・介護従事者向けイベントでの情報発信のほうが効率的だと考えていたことが背景にあったのだという。
コロナ禍がきっかけで再認識した 企業の社会的使命を発信
先述した従来の方針とは打って変わり、全国でテレビCM放映を開始したEMシステムズ。なぜ、他媒体ではなく、テレビでの出稿を決めたのか。國光氏は、2020年に猛威を振るったコロナ禍で感じたことが起点になったと当時の想いを話す。
「パンデミックが起き、医療・介護業界に大きな...