コンセプト開発の極意
☑制約があるからこそ、考え抜いた商品展開が可能になる。
☑ぶれないコンセプトは、思いもよらぬ事業との共通項を探る起点になる。
☑「何を届けたいか」を言語化したのがコンセプト。
4週間サイクルで商品を投入 鮮度を保つための仕組みづくり
私は現在、雑貨ブランド「3COINS(スリーコインズ)」全体のブランディングと商品開発からプロモーションなどのマーケティング施策までのディレクションを担当しています。今回は、その業務のなかでも商品企画開発のフローや、そこにおける「コンセプト」の在り方について、当社での取り組みを中心に、お伝えしていきたいと思います。
当ブランドのアイテム数はおよそ2500点。様々なカテゴリを取り扱っていますが、商品開発・販売にあたっては「4週間MD」という考え方を導入しています。
4週間MDは、当社グループのアパレル事業では元より取り組んでいる施策で、4週間という短いサイクルで、店頭展開する商品の改廃を行っていくものです。当初、この短いサイクルでの商品の入れ替えは雑貨事業では難しいと考えていましたが、当社が持つアパレルのノウハウを活かすことができればそれは独自の強みになると判断し、2020年に導入しました。
商品部の商品企画担当は20名。それぞれが担当するカテゴリを持ち、商品開発・投入のスケジュールに責任を持って動いています。担当者は実際に製品をつくるメーカーと共に、企画をブラッシュアップしながら4週間MDに基づいて商品を投入していきます。
そうすることで店舗全体が活性化し、お客さまは足を運ぶ度に新しい発見が得られる、何度も行きたくなる。店頭の鮮度を大切にするための、今となっては無くてはならない施策です。
そうして開発された商品をお客さまへ情報として正しく届けるために、商品担当者が起点となり、他のセクションと連携を図ります。
当社では店頭プロモーションや宣伝広告を担う部署があり、商品部も含めて私がそれらを取りまとめるという組織構成になっています。部門間で情報共有をするための定例会議はあるものの、やはり重要なのはコミュニケーション。担当者がその都度メンバーを集めて打合せをしたり、個々で日常的に会話をしながら、商品コンセプトとプロモーション方法に齟齬がないかをチェックし、最大限の効果を目指します。
販売価格の制約が価格訴求だけではない強みに
ここで改めて特集のテーマであるコンセプトという話に立ち返ります。当ブランドは300円を切り口として日常生活における“ちょっと幸せ”を提案することをコンセプトとしています。この方針自体は、ブランドが創設された約30年前から変わっていません。
私たちの場合、「3COINS」という屋号そのものにコンセプトが集約されており、事業の大前提でもあります。300円と言い切ってしまっていることで、それは事業としての制約になっているかもしれない。でもその制約の中で価値をつくることができれば、それはブランドとしての価値になると思っています。300円だからこそ提供できる価値。今、私たちが強く意識している部分です。
その上で、「ちょっと」と「300円」という言葉は非常に相性がよいと思っています。例えばコスメとかアクセサリーとか。一般的には価格が高いようなものでも、300円なら“ちょっと買ってみよう”“試してみたい”と思ってもらえるし、反対に300円だからこそできる贅沢もある。日々の暮らしをあらゆる面で豊かにする可能性を持ったバランスの良い価格なんです。
販売価格の制約を価値に変換し、お客さまへ提供し続ける。それを体現し続けることが、結局は私たちのコンセプトの共有になっているのではと思います。
さらに現在は300円以上のアイテムも展開していますが、これも、なんでもありというわけではありません。例えば1500円、2000円の美容家電シリーズやイヤホンなどがありますが、それはお客さまの「その価格であればちょっと試してみたい」を叶えるための私たちのトライでもある。より多くの人にコンセプトを体感してもらう可能性を広げることができると思っています。
「ちょっと幸せって何?」 壁に当たったときに立ち返る軸に
実は数年前、世の中が急速に変化していく中で、私たちの事業が伸び悩んだ時期がありました。その時に立ち返ったのが、「お客さまが求める“ちょっと幸せ”って何?」ということ。単に世の中の流れに合わせて価格競争的なことをするよりも、ブランドとして価値を上げ、3COINSを選んでもらうにはどうしたらよいのか。社員の一人ひとりが改めてコンセプトに立ち返り、商品展開やデザインだけでなく店舗内装や販促物など、ブランド全体としての姿勢を大きく見直しました。
お客さまに新たな価値を提供するための施策として、近年では様々なブランドやコンテンツとのコラボレーション企画も実施しています。
この時にももちろん...