マーケティング部署が担っている主な役割は、商品開発や広告コミュニケーションなどをはじめとした、いわゆる川上の部分が一般的だった。しかし、現在は川下である販売の現場の戦略立案にまで担当領域が広がっている。今後もこの潮流が続くと考えると、ブランドマネージャーに求められる知見に変化はあるのか。店頭施策に定評のある「ミンティア」を担当する河口文彦氏が解説する。
ファネルの各フェーズで区切らず ひとつに繋げた施策が必要に
リアル店舗の店内においても、さまざまなデジタル販促が可能になっている。それに伴い、メーカーの事業部やブランド担当部署は、「購買時点」まで含めたブランド体験の設計もマネジメントする必要性が出てきた。
アサヒグループ食品が展開する「ミンティア」は数年前から、オンライン決済アプリの「PayPay」を使った店頭施策などを行っている。企画を立案したのはリテールを管轄する部署ではなく、ブランドをマネジメントするマーケティング部署だ。
なぜ、アサヒグループ食品は、マーケティング部署による有効な店頭施策を実行することができるのか。その理由のひとつには、同社の組織体制が関係している。
同社のマーケティング部は、ブランドごとに分かれているブランド統括制が主流。具体的な担当領域は、商品開発や広告コミュニケーション施策、キャンペーン企画から、販売戦略の立案、店頭施策の実施・事後分析などだ。店頭施策は営業部門が実施する施策もあるため、密に連携を取りながら進めているが、基本的にはブランドマネジメントをするうえで必要な業務を一気通貫でカバーしている。
ブランド統括を筆頭に、部署内で広告、店頭といった顧客接点ごとに担当者を決め、各施策を企画・実行していくという形だ。この運営体制のおかげで、同社はこれまでも、ブランド担当が効果的な店頭施策を実行することができている。
しかし、ひとつのマーケティング部が多様な役割を担っているとはいえ、各施策が一貫したマーケティング戦略を実行するにはまだ難しさもある、と「ミンティア」ブランドを統括する河口氏は話す。
「当社のブランド統括の役割は、核となるブランド戦略をつくり、それに基づいた施策の実行に向け、ブランドマネジメントをする部署内の各担当者にディレクションすることでした。しかし、実際には各戦略が分断されがちで、各自が担当領域内だけの最適化にとどまっている状況。広告担当であればコミュニケーション、店頭担当であれば店頭の施策を実行し、それだけで役割を終えていました。しかし今は、それぞれの...