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IMCからIMXへ―「Coke ON」はコカ・コーラのマーケティングをどう変える?

自販機×スマホで実現するメーカーの「コマースマーケティング」

宇川有人氏(日本コカ・コーラ)

従来は卸売業者や小売店を介して顧客と接点を持っていたメーカーも、顧客と直接つながり、魅力的なブランド体験を提供することが市場で生き残るための重要な鍵となっています。本連載では日本コカ・コーラの公式アプリ「Coke ON(コークオン)」の事例をもとに、顧客とダイレクトにつながる新たなマーケティングの形を考えます。

全国に約88万台の直販チャネル 自販機が担う小売店の機能

前回、コカ・コーラの公式アプリ「Coke ON(コークオン)」が生まれた背景や歩みについて紹介する中で、コカ・コーラ社は、「メーカー」であると同時に、全国に自動販売機を展開する「小売業」でもあると話しました。今回はこのテーマを掘り下げます。

コカ・コーラ社※1は、1962年に国内最初の清涼飲料自販機を導入。2021年12月末現在、日本国内にある約200万台の清涼飲料自販機のうち、約88万台をコカ・コーラ社が設置しています。

※1 日本のコカ・コーラシステムは、原液の供給と製品の企画開発やマーケティング活動を行う日本コカ・コーラと、製品の製造・販売などを担う5つのボトラー会社および関連会社で構成されている。

個々の自販機を“小売店”として見ると、コンビニやドラッグストアなどの店舗やeコマースなどの宅配サービスと比べ、売上規模や品揃え、提供サービスは少ないかもしれません。しかし自販機の特徴は、無人で24時間・365日稼働し、全国の至る所に設置されている圧倒的な拠点数であり、飲料が必要な時に身近なところでサッと買えることは、大きな強み・可能性と捉えています。

「Coke ON」をスタートした目的のひとつは、アプリを通じて自販機の利用者と直接つながることで、小売店のような接客を実現し、さらにデータを活用しながら店舗体験(UX)を改善すること。そして、アプリやデータを活用した、自販機ビジネスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めることで、自販機チャネルの強み・可能性を引き出すことでした。

「Coke ON」が提供する機能のうち、スタンプサービスや、キャッシュレス決済が利用できること自体は、自販機では新しくても、消費者が小売店に期待する“当たり前”のことに応えているにすぎません。しかし、「Coke ON」では、これらを単なる「機能」としてではなく、様々な演出やデータを活用することで、独自の「自販機接客」「ブランド体験」として、サービスに組み込むことに注力しました。

「Coke ON」の象徴的なアクションに、「Coke ON」でドリンクチケットやキャッシュレス決済を利用する際の「スワイプ」があります。「Coke ON」アプリを自販機につなぐと、消費者の手元のスマホ画面上に、目の前の自販機で販売されている商品が表示され、スマホ画面内で選んだ商品を自販機に向けてスワイプすると、ドリンクが自販機から出てきます。

自販機のボタンに一切触れることはなく、スマホ操作だけでドリンクが出てくる体験は、どこか新しさ、楽しさがあり、非常に好評です。

「ブランド体験」をつくるには、メディアを...

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