出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。
山田 遊が考える「編集」とは
☑ロジックに基づいて行われているもの
☑形づくる際に必要なあらゆる諸要素を、繋ぎ合わせるために理解すること
編集は特別なものでもなければセンスが不可欠なものでもない
物が良いだけでは売れない 店を形づくる諸要素を理解する
私はいわゆるメディアの「編集」を仕事にしているわけではありません。ですが、何かしらのモノや情報を集めて、ひとつの空間や場、コンテンツを創出することを編集と呼ぶのであれば、バイイングやキュレーション、店づくりといった私の仕事も編集と呼べると考えます。編集という概念が広義になったからこそ、人それぞれで編集というものへの考えが多様化しているのでしょう。
また、広義ということは、いろいろな意味や行動を内包している状態とも言えるはずです。つまり、複数のことを同時にしなければいけなくなり、その働きを求められるようになっているという意味です。
そう考えたとき、バイヤーである私が思う編集とは、「(私の仕事で言うと)お店を構成する諸要素を把握し、それぞれを繋ぎ合わせるために理解すること」です。
お店づくりという観点で、広義になった編集を考えてみます。お店をつくる(編集する)ときに必要なことは、「良い商品を集める」という1つの行動に限りません。その商品たちが並ぶ空間の「ライティング」を考えたり、「陳列方法」を想像したり、その店に足を運ぶ「お客さま」のことを考えたり……、店を取り巻くあらゆる諸要素について考えを巡らせます。「バイヤーは、良い商品を買い付けてくるだけでよいのでは?」と考える人もいるかもしれません。ですが、私の経験上、商品そのものの質が良く、価値があるだけでは売れるとは思えません。
何が言いたいかというと、お店を編集するためには、モノを選ぶことに絞ってスキルや知見を磨くだけではいけないということです。お店を形づくる膨大な情報や物事について理解し、それぞれを...