QUESTION:
Q.社史の作成の際に、あるノンフィクション作品を参考にしました。著作権侵害になりますか。
ANSWER:
POINT 1
社史に関する裁判
先日、社史に関する高裁判決がありました(知財高判令和4年7月14日)。あるノンフィクション作家の大手自動車メーカーに対する不当利得の返還請求で、「書籍の内容が社史に無断で利用された」などと著作権侵害が主張されましたが、作家の請求は棄却されました。社史は、広報活動の一環として、広報宣伝部門の方々が作成に関与されることも多いように思われます。今回は、社史について取り上げます。
社史の作成には、過去の資料を収集及び精査し、事実を選択した上、年表や文章にまとめる作業が必要となり、(元)社員などのインタビューが行われることもあります。参考にした資料やインタビューが著作物にあたり、その表現部分を無断で利用した場合には、複製権、翻案権などの著作権の侵害となり得ます。
POINT 2
考え方
冒頭の事案では、作家は、ノンフィクション作品が、①取材によって発掘した事実を、②制作方針に基づいて選択し、③創作的に表現した創作活動であるなどと主張しました。作家は、自動車メーカーの社史において、ノンフィクション作品と同じ事実やエピソードが次々と登場する点を...
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