出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かされている方に、その編集術に対する考えを聞きます。
能勢邦子が考える「編集」とは
☑誰かに何かを魅力的に伝えること
☑もっとも大事なのは「何を伝えるか」
伝えたいものに対する解像度が高まるほど「編集術」はビジネスに生きる
伝えたいものに対して明確で熱い想いを持てているか
編集とは何か?「誰かに何かを魅力的に伝えること」と私は説明しています。
あの店のあのオムライスを魅力的に伝えるにはどんな写真でどんな言葉で表現すればいい?雑誌、Webメディア、カタログ、SNS…、どう伝え方を変えればいい?いわば情報伝達の工夫です。
そう考えると編集術がビジネスに生きるのは当然ですよね。企画書をつくり、プレゼンテーションする。上司に報告し、クライアントにメールする。Webで発信し、SNSで拡散する。広報、マーケティング、宣伝に限らず、すべてのビジネスは情報伝達のうえに成り立っています。
冒頭に3つの要素、①何を伝えるか、②誰に伝えるか、③どう魅力的に伝えるかと挙げましたが、この3つのうち一番大切なものは、誰が何と言おうと「①何を伝えるか」です。伝えたいものはこれだ!これを伝えたい!という明確で熱い“想い”があってはじめて魅力的なコンテンツになります。これは当たり前のように思われるかもしれませんが、何を伝えるか曖昧なまま、想いのないまま発信されるコンテンツが世の中にはたくさんあります。
伝えたいもの…、自社製品でしょう?会社そのものだよ!と思ったかた、その製品の何が魅力なのか、会社そのものの売りは何なのか、そこを明確にする必要があります。友達に「すげぇ楽しいんだ」「めっちゃヤバいよ」と話す、その熱量を持てるまで考えます。
特にマーケティングに携わるかたは、②誰に伝えるか、③どう魅力的に伝えるか、から考えることが多いと思います。顧客(読者)をリサーチして分析する。F1層、Z世代といった属性から、顧客(読者)のニーズを探る。そういったデータ化、抽象化がマーケティングでもあるわけです。
さらに言うとマーケティング業界は流れが速くて、次々に事象が言語化されトレンドになり、そして形骸化していく側面もあります。言語化、可視化したパワーポイントの資料を何度もつくり替え最適化する(言語化、可視化、最適化もトレンドワードですよね)。それだけで満足しがちですが、そもそも①何を伝えるか、そこに想いは...