まだみんなに気付かれていない 商品やサービスの『価値』の第一発見者になろう
本当は必要としている人がいるのに、気付かれず見向きもされていない考え方や、商品・サービスが世界にはたくさんある。そういうものを伝えて、人を動かす広告に興味を持ったのです。申し遅れましたが、東急エージェンシーの堀内有為子と言います。コピーライターとして先輩からの教えや体験から学び取った、自分なりのコピーを書く手順をご紹介します。
☑企業の本質を再定義すること
☑企業の価値観をチームで共有すること
☑広告を見た社員が実際にモチベートされること
昨今、自分たちの存在目的を明確にしようとするためにパーパスやミッションを策定し、追求する企業が増えてきています。
その大きな流れを受けて、BtoB企業においても自社の存在意義を改めて世の中に発信する広告クリエイティブが増えている印象があります。
また、パーパスにおいてはただ発信する(SAY)だけではなく、実際に行動する(DO)ことも重要視されつつあり、パーパスに基づいた新しい採用アクションや、インナー向けアクション、社会的アクションなども増えているように感じます。
私がBtoB企業から仕事の相談を受け、その事業について詳しく聞くたびにいつも感じるのは、「日本には、こんな面白い志や技術を持った会社がまだまだあるんだ!」という希望です。
日本の未来について、どうしても暗い話が多くなりがちな時代の中で、素晴らしい魅力を持ったBtoB企業の発信や行動が増えると、日本の可能性を信じられる人がきっと増えていくはず。その一助になればという思いで、日々の仕事に向き合っています。
ただ一方で、世の中のBtoB企業が発するメッセージに目を向けると、「未来」「地球」「共創」などの抽象的な言葉を用いた、似たようなメッセージが溢れてしまっているのも事実です。家でCMを見ていても、「なんか良いことを言っていた気がするけど、どこの会社のCMだったっけ?」と思い出せない経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。未来について正しく語ろうとするとどうしても表現が似てしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
しかし、BtoB企業の広告が増えてきた今だからこそ、改めて「その会社ならではの本質」を丁寧に深掘りし、その会社だからこそ言えること、その会社だからこそ言うべきことを見定めることが重要です。
今まで携わらせていただいた経験から、そのために必要なポイントを5つにまとめました。
そもそも、BtoB企業は何のためにブランディングをするのでしょうか?BtoC企業であれば、「生活者に自社の商品を選んでもらうために、好きになってもらう」という、わかりやすい目的があります。しかし、BtoB企業の場合は、生活者に好きになってもらっても、手に取ってもらえる商品がありません。
私はBtoB企業のブランディングの一番の目的は、「仲間をつくること」だと考えています。社員や、そのご家族、就活中の学生、取引先、投資家、メディア記者など様々な立場の方々を惹きつけて、同じベクトルに向かって進める仲間にする。ひとりでやる事業ではなく、会社でやる事業だからこそ、その結束力が何よりも競争優位性になると思うからです。
どんなメッセージを掲げると、社員の皆さんをはじめとする様々なステークホルダーの方々が、思わずワクワクして将来へ期待したくなるか。私はその企業ならではの「北極星」を探すことを大事にしています【図1】。
図1 BtoB企業のクリエイティブに盛り込むべき「北極星」のイメージ
では、その「北極星」を見つけ出すにはどうすればよいか。私はよく、「一見○○をしている会社だと思われているが、実は△△をしている会社」という再定義を試みます。広く知られている事例でいうと、例えばトヨタは「自動車をつくる会社だと思われているが、実はすべての人の移動を自由にしている会社」ですし、パナソニックは「家電メーカーと思われているが、実は人のくらしをアップデートし続ける会社」です。
このように、その企業が「何をやっているか」だけでなく、「何のためにやっているか」まで踏み込んで、企業の本質を再定義できると、「北極星」に近づきます。
この再定義は、その会社の中でずっと働いていると気づきづらいことも多いと思うので、広告会社のマーケターやクリエイターによる「外の視点」が、特に生きる気がしています。
そして、「北極星」を見つけるためにもうひとつ大事なのは、「その企業のDNAや価値観を、広告会社のクリエイティブを含めたチーム全員で共有すること」です。日常生活でも、同じことを言っているのに話者が変わると納得感が全然違うということがあるように、メッセージが話者となる企業のキャラクターに...